1 現実味を帯びてきた朝鮮半島有事

何事も大切なのは原則だ。

これを外れて枝葉末節に議論が飛躍すると、とんでもない結論にいたったりする。

北朝鮮の核保有は、体制存続のためといった受け身のものだ。
だから一貫して米国との話し合いと、体制存続の保障を求めてきた。

体制を維持するためには核兵器の開発しかないと考えてきたのである。
また、日韓の米軍基地と、米国と日韓の軍事演習を、北朝鮮を仮想敵国とした脅威として警戒してきた。

こう考えると、北朝鮮の核は受け身のものと考えることができる。
北朝鮮としても米国に攻撃されたら、肝腎の金王朝体制は瓦解してしまうことは知っているので、自滅しか意味しない米国への先制攻撃などはありえない。

しかし、ついにこういう声が米国議員から出てきた。

【ワシントン時事】米共和党のグラム上院議員は3日、CBSテレビのインタビューで、北朝鮮との軍事衝突が近づいているとの認識を示し、「在韓米軍の家族を韓国国外に退避させるべき時が来た」と訴えた。

グラム氏は「北朝鮮が米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の技術と核兵器の融合を進める中、われわれは軍事衝突に近づいている」と発言。
時間はあまり残されていない」と繰り返し、北朝鮮と戦争になれば大きな被害を受けるとされる韓国から米軍兵士の妻や子供を退避させるべきだと訴えた。
韓国には米兵約2万8500人が駐留している」(在韓米軍家族の退避訴え=北朝鮮と「衝突近づく」と米議員」『時事通信』12月4日)

日本では朝鮮半島有事は二面から見る必要がある。

(1)安倍晋三が米国のガラクタ兵器の購入正当化のために、北朝鮮脅威を煽っている。

(2)北朝鮮を先制攻撃するのは米国なので、米国の動きを中心に、中・ロの動きを見る。

もちろん(2)の見方が本質なのだが、米議会から退避の声が挙がりはじめた。
実際に韓国から米国民が退避しはじめるのは徐々にであろう。
最終的には米政府の指示があって大量の退避がはじまるのだと思われる。

以前も書いたが、「北朝鮮の脅威」を煽りながら、安倍晋三には、次の認識すらない。

(1)一度煽られた国民は、政権の意図を超えて燃え上がり、止めようがなくなること。

(2)北朝鮮への先制攻撃を決めるのは米国であり、日本には拒否権もなく、自衛隊は米軍の指揮下におかれ、参戦せざるを得ないこと。

(3)一度戦争がはじまれば金王朝は壊滅する。それを認識している金正恩は、日韓原発への攻撃をすること。

それで今日は北朝鮮有事について、エレノア・アルバートの「対北朝鮮経済制裁を検証する ―― 制裁に意味はあるのか」を切り口にして考えてみる。

2 北朝鮮制裁に意味はあるのか

エレノア・アルバートは書いている。

平壌は世界の市場から次第に切り離されて孤立を深め、民衆は経済的機会を奪われている。
2017年9月に新たに採択された制裁措置が履行されれば、さらに13億ドル相当の平壌への物資の流れが遮断される。
北朝鮮にとって石炭に次ぐ、最大の輸出品である繊維製品の輸出も、今回の国連制裁で禁輸措置の対象にされた。
すべてを合わせると、国連の制裁措置は、北朝鮮の公的輸出の90%をカバーしている。

だが実際には、2016年の北朝鮮の経済は4%の成長をみせ、過去17年間でもっとも急速な成長を遂げている(もちろん、エコノミストが指摘する通り、1人当たり国民総所得(GNI)は150万ウォン、つまり、ドル換算では1342ドルに過ぎない。
ちなみに、この数字は韓国の1人当たりGNIの5%に満たない)。

(中略)

実際、国連安保理の常任理事国として拒否権をもつ北京とモスクワは、平壌で体制変革が起きることの帰結を憂慮している。
国際危機グループのマイケル・コルビッグは北京の考えを次のように説明する。

「中国は金正恩に対して北朝鮮の核開発プログラムは受け入れられないし、問題行動にはペナルティが課されるというメッセージを送りたいと願いつつも、北朝鮮崩壊の引き金を引いたり、隣国を永続的に敵対国にしたりするのは避けたいと考えている」

制裁が金正恩をさらに大胆にさせていることも問題を複雑にしている。

厳格な経済制裁は逆効果で、むしろ、平壌をさらに核開発に駆り立てる傾向がある。
2012年に権力者になって以降、金正恩は彼の父や祖父が実施した以上のミサイル実験と核実験を行っている。
制裁が強化される度に、国の存続が脅かされていると考え、これが米領グアムを標的にするといった強硬発言を招いている。
制裁の強化が、より敵対的な言動へと彼を駆り立てているのかもしれない。

こう考えると、制裁を試みるのはそもそも不毛なのかもしれない。
外交専門家の一部は、経済制裁だけでは、平壌が核開発を進めるのを抑止する効果はほとんどないと考えている。
例えば、CFRのリチャード・ハース会長は「いかなる制裁も、北朝鮮の非核化や非ミサイル化へつながっていくことはあり得ない」と述べている。
実際、北朝鮮は、いかなるコストを支払ってでも核の兵器庫を維持していくつもりのようだ。

しかも、経済制裁の余波にさらされるのは、多くの場合、民衆たちで、本来のターゲットであるパワーエリートではない。

延世大学のジョン・デルーリによれば、「経済が締め付けられても、軍事予算が削られることはない。(軍の予算が削減されるのは)最後の最後だ。経済的困窮には慣れているし、政府はそれにどう対処すべきかを心得ている」。
これまでの経済制裁と長期にわたって続いた飢饉によって、2500万もの民衆が栄養失調に陥り、貧困のなかで苦しんできた経験がある」(『Foreign Affairs Report』2017 NO.12)

日本では軽く見られているが、国連の制裁措置は、北朝鮮の公的輸出の90%をカバーしている大きなものだ。

だが、それにも関わらず、2016年の北朝鮮の経済成長は4%にも達した。
米国を中心とした最大の経済制裁のなかで、過去17年間で最大の成長を北朝鮮が見せているのは、なんとも皮肉なものだ。

中国・ロシアとも米国の北朝鮮攻撃には明確に反対している。
戦争がはじまれば金王朝が壊滅することは明確であり、中ロ国境沿いに米国のミサイルが林立する。
この事態は絶対に認められないところだ。

ここで、エレノア・アルバートは「厳格な経済制裁は逆効果で、むしろ、平壌をさらに核開発に駆り立てる傾向がある」と書いている。
これは非常に重要な指摘である。

この世には逆効果ということが個人にも組織にも国家にもある。
追い詰めて白旗を揚げる場合がすべてではない。
窮鼠猫を噛む場合も多いのだ。

現在までのところ、制裁を強化するほど北朝鮮の反発は強まるばかりだ。
グアムを標的にするとまでエスカレートしてきた。
この緊張は、ひとつはトランプのアマチュアリズムに原因があり、そのアマチュアリズムを無能で無責任で冷酷な安倍晋三が煽っている。

「延世大学のジョン・デルーリによれば、「経済が締め付けられても、軍事予算が削られることはない。(軍の予算が削減されるのは)最後の最後だ。経済的困窮には慣れているし、政府はそれにどう対処すべきかを心得ている」。この指摘は重要だ。
この認識をもつ世界の指導者は多い。

たとえばプーチンは「北朝鮮は雑草を食べることになったとしても、自国の安全が保障されない限り(核開発の)計画をやめない」と述べている。
このとき、ロシアに経済制裁を科している米国が、北朝鮮への制裁でロシアに協力を求めていることに関して「ばかげている」とプーチンは述べた。
実際、米国のやり方には以前の一極支配の無神経な傲慢さがつきまとう。

朝鮮半島で開戦の火蓋を切るのは米国であり、安倍晋三の後押しを受け、トランプ軍事政権は日ごとに開戦に近づいている。

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