5月28日、北海道北斗市の小学2年生、田野岡大和(7歳)は、家族で近くの公園に遊びにきていた。

車や人に小石を投げるなどしたため、午後5時ごろ、両親は「しつけのため」として北海道七飯(ななえ)町東大沼の山道で車から降ろした。5~10分後に両親が戻ったところ姿が見えなくなっていた。

ネットでは賛否両論、大きな話題になっている。これはなかなか難しい問題である。

『朝日新聞デジタル』(2016年5月31日)は、「「しつけ」で2度置き去り 車に乗せ再び降ろす 北海道」として、こう書いている。

「道警によると、両親は5月28日午後5時ごろ、「しつけ」のため、山道で大和君を車から降ろした。大和君が泣きながら車を追いかけてきたため、車に乗せたがしばらくして再び降車させたという。現場から車で去り、5~10分後に戻ったときには大和君の姿がなかったという」

こういう不注意な書き方が、世間の両親への反感を煽ってしまう。「大和君が泣きながら車を追いかけてきた」という書き方がそうだ。この問題で押さえるべきポイントはそこではない。

(1)子供を連れて家族で公園に遊びにくるような両親であったこと。

(2)子供が泣きながら車を追いかけてきて、一度は車に乗せていること。これで再び降車させているが、この間、おそらく車のなかでふたたび両親の説諭があり、それへの肯定的な反応がなかったのである。これを取材するのが記者なのだが、なぜ二度目に降ろしたのかは何も書いていない。ここは非常に重要なポイントであるが、記者にも警察にもわかっていない。

(3)子供を車から降ろしたとき、両親が「ここで反省しなさい。すぐ迎えにくるから。ここから動かないように」といった注意をしていないこと。

(4)両親は5~10分後に迎えに戻っていること。

(5)自衛隊が、両親が子供を降ろした地点から、直線距離でわずか5キロしか離れていない鹿部町にある自衛隊の駒ヶ岳演習場の宿営施設を、まったく点検していなかったこと。(1回は見たらしいが、見落としている)

ネットで大騒ぎになったひとつの理由は、尾木ママの次の発言であった。

「今
大切なのは
子どもを救出し、命を守ることです!!
こんな状況に置いた親は厳しく批判されるべきです
警察にも間違いなく逮捕されることでしょうね」

こうなると、もういただけない。逆にテレビ文化人の権力を行使して世間の非難を煽っていると見られても仕方がないだろう。こういう発言をすると、バカが動き始めるのである。

両親は明らかに善意から出発している。しかし、山の恐さをあまり知らなかったと思われる。子供にはその場にじっとしていたら、すぐに両親が迎えにきてくれるという想像力はなかった。この判断はなかなか難しいのである。大人でも永遠に置き去りにされたと判断して、麓に向かって歩き始める人がほとんどだろう。

父親は、すぐに降ろした現場に迎えに戻っているのだが、それだったら「この場で反省しなさい、すぐにここに迎えにくるから」と指示しなければならなかった。

大人の関係でもそうだが、去るときは、去る理由と迎えにくる時間とをいわなければ、わからないのである。この問題が難しいのは、相手がわかっていないことに気付くこと自体が、なかなか困難なことだ。

結論をいっておけば、わたしは、この両親に任せておいて大丈夫なような気がしている。忙しい仕事の合間を縫って、両親揃って子供を連れて公園に出かける。子供が車や人に小石を投げたのを見て説諭する。こういうことをしない大人がどれほど多いことだろう。

今回はたまたま(3)の注意を怠って、子供が動いたために大騒ぎになったが、両親のバッシングは止めるべきだ。

今日のメルマガでは、(5)の、自衛隊が敷地内にいる部外者を数日間も発見できなかったことを掘り下げて考えてみよう。

山中での説諭事件を、自衛隊は勿論知っていた。捜索に加わり、最初に田野岡大和を発見した隊員は、「お父さんもお母さんも怒ってないよ」と声をかけている。電通に支配された東京の大手(「記者クラブ」)陰謀メディアは、美談風味に仕立てているが、そういう問題ではまったくない。

自衛隊は、最近(2016年5月23日15時半頃)も、北海道鹿追町の陸上自衛隊然別演習場で、実弾79発で仲間内で撃ち合い、負傷者を出すといった、およそ考えられぬような不始末をおこしたばかりである。この事件、本来は敵役と援護役に分かれて、実弾でなく、空砲を使う予定だったというから呆れる。

米陸軍指揮幕僚大学卒(カンザス州)の「ヒゲの隊長」こと佐藤正久は、2016年5月24日のツイッターで「「【記事を見て驚き、ありえない。空包と実弾を間違えて撃ち合うとは?】実弾は弾丸が装着されており、空包とは形状も違う。実弾と気づかずに実弾を弾倉に詰めることは通常は考えられない。全員が気がつかないとは? 理解に苦しむ」とした。

続けて、

「【原因は? 極めて不可解な、陸自の実弾誤射事件】空包と思い込み実弾を数十発撃ち合ったようだが、空包用のアタッチメントを小銃に装着したまま実弾を撃てば、アタッチメントが破壊される。一発撃てばわかりそうなものだが、数十発撃ち合ったとは?

「【自衛隊実弾誤射事故、次第に状況が判明、実弾を79発撃ち合い】本事故では、軽傷で済んだようだが一歩間違ったら大惨事になり兼ねない事故のようだ。事実確認と再発防止が鍵、実効性ある対策が必要だと思う。命は極めて大事

とツイートしている。

ネットでは様々な見解が出ていたが、すべてはあり得ない事故といった驚きから生まれた見解で共通している。

今回の山中での説諭事件でも同じで、自衛隊のあり得ない不祥事だ。

自衛隊は、なぜメディアが第一報を報じた時点で施設の点検をしなかったのであろうか。駒ヶ岳演習場の3か所のゲートは、一般人でも通り抜けられるようになっており、両親が子供を降ろした地点から直線距離でわずか5キロしか離れていなかった。

これをやっていれば簡単に初日に発見できていたのである。

軍隊には、「まさか」や「うっかり」があってはならない。その可能性を日頃から潰しておくのが学習であり訓練である。幹部や隊員のなかで、ひとりも敷地内を毎日点検しようという者がいなかったということは、驚くべきことだ。少年はいつ迷い込むかもわからないので、連日やらなければ意味はないのだ。1回だけやったという情報もあるが、軍人の発想とも思えない。

発見も、雨を避けて、偶然に施設に入った隊員によってなされたものだ。雨が降らなければ、発見はいつになったかわからない。これがもし敵の大人のスパイだったときのことを考えると、どんな仕掛けがされていたかもわからない。

日本の自衛隊は、いったいどういったたたずまいの軍隊なのだろうか。その本質にまで掘り下げてみよう。

矢部宏治は『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』のなかで書いている。

「「日本区域において戦争または差しせまった戦争の脅威が生じたとアメリカ政府が判断したときは、警察予備隊ならびに他のすべての日本の軍隊は、日本政府との協議のあと、アメリカ政府によって任命された最高司令官の統一指揮権のもとに置かれる」(「日米安全保障協力協定案」第8章2項)

これは「はじめに」で紹介した、吉田(吉田首相 注 : 兵頭)が口頭でむすんだ統一指揮権密約のもとになった条文です(「統一指揮権のもとにおかれる」というのは、「指揮下に入る」という意味です)。

戦争になったら、自衛隊は米軍の指揮下に入って戦う
という内容は同じですが、「戦争になったと判断するのが米軍司令部である」ことも、はっきりと書かれています。これがアメリカ側のもともとの本音だったのです。

ここで昨年の安保法案の審議を思い出してください。あの国会のやりとりのなかで、もっとも奇妙だったのは、

「どのような事態のとき、日本は海外で武力行使ができるのですか」
「現時点で想定される存立危機事態とは、具体的にどのような事態ですか」と、野党議員から何度聞かれても、安倍首相や中谷防衛大臣は最後までなにも答えられなかったことでした。

しかし、この条文を読めば、その理由は一目瞭然です。それは彼らが判断すべきことではなく、アメリカ政府が判断すべきことだからなのです」

「日本区域において戦争または差しせまった戦争の脅威が生じた」と判断するのは米国である。一応、「日本政府との協議のあと」となっているが、現実は、このような緊急事態に協議などなされる筈がない。自衛隊は米国の任命した最高司令官の統一指揮権のもとに置かれるのである。

こんな独立国があるのだろうか。いや、これで独立国といえるのだろうか。わたしは日本を実質的には植民地と表現している。何を大げさな、という人には、ぜひこの「日米安全保障協力協定案」第8章2項をもとに、どうしたら独立国と呼べるのか、展開してほしいものだ。

シビリアン・コントロールも実態は米国が保持している。官僚・政治家の「背広組」というのは、独立国家の偽装にすぎない。だからわたしはこの国の姿、たたずまいを、植民地と表記してきたのだ。

この「日米安全保障協力協定案」第8章2項を読んで、わたしは、5月28日の、小学2年生の捜索活動で自衛隊が敷地内を捜索しなかった件も、また、5月23日の陸上自衛隊然別演習場での、実弾79発で仲間内で撃ち合った件も、深層で理解できたように思った。

大きな虚無が、自衛隊幹部の胸臆に巣くっていてもけっしておかしくはない。政治が悪いのである。

この国は、表向きはテレビのバラエティを見ながら、へらへらと嗤っているが、政治家も自衛隊員も国民も、深層では病んでいるのだ。

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