伊勢志摩サミット(5月26、27日)が近づいてきた。世界では、とりわけ日本、中国、韓国、北朝鮮では、オバマが被爆地の広島を訪問するか否かに大きな関心が集まっている。

もしオバマが広島を訪問するとしたら、次の6点の理由による。

1 オバマの任期が二期目に入り、かれ個人への政治的影響が少ないこと

2 4月11日に、米国の現役閣僚として、ケリー国務長官が平和記念公園を訪ねて原爆ドームを視察していること。かれは記者会見で「大統領もここにきてほしい」と語っていること

3 オバマの非核化運動に弾みがつくこと

4 米国離れが続く世界で、日本をつなぎ止めておきたいこと

5 日米同盟の深化の象徴となること

6 ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストが、オバマの広島訪問を求める社説を載せたこと

反対に、オバマが広島訪問をやめる場合の理由は、以下の5点になるだろう。

1 退役軍人を中心とした米国保守層の反発と批判

2 中国・韓国の警戒と反発への配慮(広島・長崎が免罪符になり、日本の戦争責任が後退する

3 米国大統領選への配慮(共和党からの謝罪旅行の批判)

4 日本軍国主義と米国とともに戦って勝利したとする中国共産党正当性への配慮

5 太平洋戦争における日本加害者論の根拠が、希薄になることへの、米・中・韓の共通した危惧

ジェニファー・リンドは、「オバマは広島を訪問すべきなのか ―― 感情と理念と政治」のなかで書いている。

(ジェニファー・リンドは、ダートマス・カレッジ准教授。過去、『Foreign Affairs Report』には「日本の歴史認識と東アジアの和解を考える――反動を誘発する謝罪路線の危うさ」を発表している)

「「核なき世界」を国際社会に求めたことで2009年にノーベル平和賞を受賞したオバマも、核軍縮という目標を目指すうえで、広島訪問に象徴的意義をみいだすかもしれない。「オバマにはそのような、毅然とした態度を示してくれる象徴的な指導者であってほしいと、世界の多くの人々が願い、期待している」と「ポリティコ」のピーター・カネロスは言う。

2016年5月は、そうした姿勢を行動で示す絶好の機会だろう。大統領任期が残り1年足らずとなって今なら、行動に出てもおかしくはない。

とはいえ、過去10人のアメリカ大統領は広島訪問を避けてきたし、オバマがその11人目になる可能性もある。実際、2015年にホワイトハウス報道官のジョシュ・アーネストは広島訪問の可能性を打ち消すようなコメントをしている。

「過去3回もあった大統領訪日の際に、広島にも長崎にも立ち寄らなかったという事実が、この件についての大統領とそのチームが、最終的にどういう結論を出したかを示している」

大統領の被爆地訪問が米国内で反発を買う恐れもある。保守派はオバマの広島訪問を日本への謝罪だと決めつけ、オバマによる「謝罪」がまたひとつ増えたと批判するだろう。

保守派はストラスブールとカイロ、そして最近ではラテン・アメリカでオバマが行った演説を 「謝罪の旅」と呼び、そのような振る舞いは、アメリカは弱い国だというイメージを作り出すと批判している」

ここで書かれていることは、広島訪問の政治的意味合いだ。

興味深いのは、米日とも、広島・長崎への原爆投下が、必要だったか、あるいは人間として許されるものであったかについて口を閉ざすことだ。根源的な問いには答えずに、隔靴掻痒、とりあえず一歩前進という政治的意味づけだ。

「過去10人のアメリカ大統領は広島訪問を避けてきた」から、今度こそ広島訪問を実現すべきだ、という考え方も可能である。

あるいは、「過去10人のアメリカ大統領は広島訪問を避けてきた」から、今度も同じように避けようという考え方もある。決めるのは政治的状況というわけだ。

ちょっと古いが(2014年12月26日)、『ロシアの声』に「ロシアが歴史再考を提案、広島長崎の原爆投下は永遠の犯罪」が載っていた。この内容は、今読んでも本質的で、新しく、今月のオバマの広島訪問を考えるうえで、非常に重要な記事である。

「ロシア下院議長でロシア歴史協会の代表を務めるセルゲイ・ナルィシキン氏は、第2時世界大戦戦勝70周年を目前に控え、1945年の広島長崎への原爆投下の悲劇を国際法の観点から見直す提案を行った。

ナルィシキン氏は、原爆を日本の一般の都市に投下した事実は軍事的観点からも正当化できないとし、その理由を軍事主義国日本に対する勝利を確実なものにしたのは主に、関東軍を大破したソ連軍だったからだと説明している。ナルィシキン氏は、米国の行動は相手を脅かす目的で行われたものであり、その結果犠牲となったのは数10万人の一般市民だったことを強調した。ナルィシキン氏は事実上、この事実は人類に対する犯罪と非難し、時間の経過で色あせることは無いと主張している。

(中略)

一方でロシア科学アカデミー極東研究所日本調査センターのヴァレリー・キスタノフ所長は、ロシア政治のこの発案は十分に興味を惹くものとして、次のように語っている。

「ナルィシキン氏の声明は西側で戦勝70周年を前に第2次世界大戦の結果やその歩み、重要な事件を見直そうという強力なキャンペーンが展開されていることと関連している。ロシアは、この戦争およびナチス・ドイツ、大日本帝国に対する勝利においてソ連が果たした役割を低く評価しようとする動きに異議を唱えている」

ナルィシキン氏の発案に日本がどう反応するかという問いに対して、キスタノフ氏は、露日関係に深刻な影響を及ぼすようなことにはならないはずだとの見方を示す一方で、日本人は広島長崎の原爆投下問題には非常に過敏な反応を示しているとして、次のように語っている。

これだけの時間が経過し、日米関係が強化されても、やはり日本人にとっては広島長崎は癒えない傷だ。なぜなら、野蛮な行為であり、こんなことは今まで歴史ではなかったからだ。こんなことは絶対に繰り返されてはいけない。ナルィシキン氏の声明に日本はかならず反応するだろう。その評価はおそらく前向きなものであると思う。

だが実際、何にこれが現れるかは、なんとも言いがたい。なぜなら日本の政府の取り巻きは米国の犯罪テーマを取り上げ、原爆によって何10万人もの人命が損なわれた歴史の責任に全く関心を持っていないからだ。日本は米国との協力路線をずいぶん前にとっていることから、日本の公式人からの反応は上げられないであろうし、この野蛮な犯罪を誰が行ったのかについては黙認路線が続行されるだろう。

もちろん米国人も心の奥底では自分の罪を感じている。だがその一方で広島長崎の市長らがどんなに頑張ったところで、米国の大統領はこの地を訪れたことはなかったし、これからもそれはないだろう。とはいえ、最近赴任したばかりのケネディー駐日米大使は広島を訪れ、慰霊祭に参列している。

だが米国人は全体として、広島長崎の原爆投下は行われなければならなかった、それを後悔する必要はないと捉えている。米国人はメンタリティーとして、何をやったところで自分たちのやったことは正しいと考えており、過ちを認めることは決してない」(「ロシアが歴史再考を提案、広島長崎の原爆投下は永遠の犯罪」

米日の1%が、オバマの広島訪問を政治的角度から捉えるのに対して、セルゲイ・ナルィシキンは「1945年の広島長崎への原爆投下の悲劇を国際法の観点から見直す提案を行った」。この視点で、初めてオバマの広島訪問は本質の俎上に載せられる。

原爆を日本の一般の都市に投下したことは軍事的観点からも正当化できないし、犠牲となったのは数10万人の一般市民だった、とセルゲイ・ナルィシキンは述べる。
「この事実は人類に対する犯罪と非難し、時間の経過で色あせることは無い」。

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