近くのスーパーに放射能汚染地のゴボウが並ぶ。この店では、3.11以前はすべて地元の野菜だった。しかし、3.11以降は被災地の野菜が並ぶようになった。外国や被災地では食べない野菜を回しているわけだ。

最近は売る方にも遠慮や気兼ねがなくなったように感じる。生活クラブのパンフレットにも被災地の魚が並ぶ。もっとも生活クラブの場合はきちんと検査してクリアしたものだけを販売しているのだろうが。

放射能汚染がすっかり風化してしまったようだ。2020年東京オリンピックでも野球の試合を福島で行う。楢葉町のJヴィレッジが、東京オリンピックでサッカートレーニングセンターとして使われる。実際にやれるかどうかはわからないが、こういう企画自体がいかにも日本的である。

ここで日本的というのは、忘れっぽくて無責任、棄民が徹底していて、外国から見ると正気の沙汰ではないことを平気でやるということだ。

東京オリンピックといえば、メインスタジアムに聖火台がないことに、関係者の誰も気づかなかった。設計案を承認してだいぶたってから、そういえば聖火台がない、と大騒ぎになった。呆れるのはこのレベルの低さだ。

予算も当初の額からうなぎ登りだ。大会後に撤去する仮設施設の整備費までもが、当初試算では約723億円だったが、4倍超の3000億円に膨らむ。最初から現在の額を出せば、オリンピック招致に賛成する人は極めて少なかっただろう。

もちろん少なめの額を提示して国民を引っ掛けたのである。しかも最初に試算した東京五輪・パラリンピック招致委員会はすでに解散している。責任を取るべき存在はすでになくなっている手回しの良さだ。

招致さえ決めてしまえば、あとは小出しに当初の案が甘かったと、頭をかきながら切り上げてゆく。それが通用する国なのである。

何兆円もの金に土建業と政治家が群がる。オリンピックが終わった後には無駄な施設に官僚が天下っていく。それを監視し、批判し、国民に知らせなければならないメディアが、日本では権力の一角を占めるシロアリである。

4月29日に、売国のTPPに関して訪米中の大島理森衆院議長が、ライアン米下院議長に対して、秋の臨時国会で成立させると報告した。

国会で紛糾している案件も、すでに決まったかのように宗主国に報告される。それも中立の立場にあるべき衆院議長がだ。民主主義も何もあったものではない。TPPが国会で批准されると、スーパーなどの地産地消の表示もできなくなる。遺伝子組み換えどころか、福島産の野菜が店頭に並んでもわからないわけだ。安全な食には相当な対価が必要な時代に一挙に突入する。

総じて日本の政治は、幼稚化し、お子ちゃま政治が続いている。これは民主党の唯一の成果で、自民党がしっかりと受け継いでいる。

今日のメルマガでは、極限にまで劣化した日本政治を、オーストラリアの潜水艦受注失敗にみることにする。

オーストラリアのマルコム・ターンブル首相は、4月26日、次期潜水艦の共同開発事業の相手に、フランスの造船会社DCNSを選定したと発表した。

これで当初は受注の最先端を走っていた日本は落選した。

この受注競争は、世界が固唾を飲んで見守っていた。本当は東京の大手(「記者クラブ」)陰謀メディアも大々的に報道しなければならない事案であったが、こういうことに関してはその重要性すらわからないのである。ほとんど報道せず、したがって国民の多くもこのことを知らない。

オーストラリアのコリンズ級潜水艦を新潜水艦に切り替える計画は、総事業費が390億ドル(約4兆3000億円)である。

この受注競争には、次の三者が参加していた。

1 日本政府と三菱重工業・川崎重工業の官民連合

2 ドイツの造船会社ティッセンクルップ・マリン・システムズ

3 仏政府系造船DCNS

日本は、海軍物資を海外で製造した経験が少ないことから、最初から受注は難しかったのである。しかし、安倍晋三はそのようには考えていなかった。

『東洋経済ONLINE』が「オーストラリア潜水艦商戦、日本敗退の裏側 潜水艦「ごうりゅう」は幻に終わった」と題してこの問題を採り上げている。

長いので、そのポイントを紹介すると、以下のようになる。

安倍晋三はアボット首相との個人的な親しさのもとで日本勝利を疑わず、途中で変わったゲームの流れについていけなかった。

勝利したフランスは、最初から自分たちが劣勢にあることを認識していた。それで現地の事情に通じた人材を獲得し、フランスの弱点を地道に克服して、勝負をひっくり返した。

オーストラリア政府は、海軍の要求性能に近い海上自衛隊のそうりゅう型潜水艦を輸入する方向で日本と話を進めていた。日豪は首脳同士の仲が緊密だった。中国けん制のために防衛協力を強化したいとの思いも共有していた。それで日本が受注することは確実とみられていた。日本の政府内では、オーストラリア向けのそうりゅうをもじり、「ごうりゅう」プロジェクトと呼ばれていた。このあたり、はしゃいでいるお子ちゃま政治がよく顕れている。

2014年11月、フランスのル・ドリアン国防相は初めてオーストラリアを訪れたが、南西部の都市アルバニーを最初の訪問地に決めた。そこは第1次世界大戦中、フランス軍の応援に、オーストラリア軍が兵士を送り出した記念的な場所だった。過去を共有することで、潜水艦の協議に向けた扉を巧みに開けたのである。

オーストラリアが景気減速に陥り、現地生産をしない日本が受注すると、オーストラリアの経済効果がないとの声が高くなった。その結果、「競争的評価プロセス(CEP)」という名の競争入札に切り替わった。このことの意味が安倍晋三にはわかっていなかった。

政府・三菱重工業・川崎重工業で作る日本の官民連合は、最初、独造船ティッセンクルップ・マリン・システムズ、DCNSとの競争になったことの意味を理解していなかった。楽観論が支配的だったのである。

アボット首相が退陣しても、日本側は危機感をもたなかった。ライバルのターンブル首相が就任し、入札は完全な自由競争となった。

フランスは、15年4月にショーン・コステロを現地法人のトップに据えた。かれは辞任したジョンストンオーストラリア国防相の側近で、オーストラリア海軍で潜水艦に乗っていた。受注に向けて現地のチームを率いるには最適任の人物だった。連絡あれば日本を支援したとかれは語っている。しかし、日本からの電話はなかった。

以上であるが、こうしてみてくると、いかにも国際受注競争で日本が負けたと見做されがちである。しかし、ことはそう簡単ではない。

オーストラリアの潜水艦を日本が建造することへの、中国の反発があった。中国からの様々な働きかけが、水面下でオーストラリアにあったことは想像に難くない。しかし、そればかりではない。

(オーストラリアのターンブル首相と中国の習近平国家主席)
(オーストラリアのターンブル首相と中国の習近平国家主席)

実は米国も最終的にはフランスの側に立ったのである。

このあたりアボット首相との個人的親密さに頼った、日本お子ちゃま政治の交渉力のなさ、政治力の弱さがよく顕れている。

ジョナサン・D・キャバリーは、「豪潜水艦調達と日独仏の競争 ―― アメリカは誠実な仲介者を」のなかで書いている。

(ジョナサン・D・キャバリーは、ウッドロー・ウィルソン・センター フェロー。マサチューセッツ工科大学リサーチアソシエート(安全保障研究)。米海軍の潜水艦士官、ノースウェスタン大学助教授(海軍エンジニアリング)などを経て、現職)

「フランスは、(オーストラリアの意向で、得意とする)原子力潜水艦ではなく、ディーゼル型の通常動力による推進システムを提案せざるをえなくなり、ドイツも(オーストラリアの意向を満たすには)既存の214型潜水艦のサイズを倍にしなければならない。

一方、日本はこれまで主要な兵器を輸出したことはなく、ましてや、外国で兵器を生産したことはない。(オーストラリア南部に雇用をもたらすために、キャンベラは国内での潜水艦建造を条件としている)。

今回は、野心的なパフォーマンス基準を妥当な投資で実現し、調達を大幅な遅延なく、ほぼ計画通りに達成することをキャンベラは重視せざるを得ない。特定国のデザインを他国のそれよりも好ましいと判断することの地政学的利益やコストは、それほど大きくはないし、アメリカの戦闘システムを搭載すれば、いずれにせよ、オーストラリアはアメリカの太平洋戦略に歩み寄ることになる」(『Foreign Affairs Report』2016 NO.4)

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