内田樹が「従者の復讐」を書いていて、これが面白い。面白いという言い方は、内田樹は不満かもしれないが、これもひとつの才能の証なのだ。

なぜ面白いかは、読者には読みながらわかっていただけると思う。

わたしは内田の説に賛成などしていないのだ。内田樹のファンからは、兵頭から斬られる、と悲鳴が起きそうだが、別に本気で斬りはしないので、ご安心あれ。ちょっと肩を叩いて挨拶した程度のことだ。

http://bit.ly/16fOxz2

内田樹は書いている。

「端的に言えば、日本はアメリカの軍事的属国である。これは歴史的事実である。

日本人は全員その事実を知っているが、「知らないふり」をしている」

「私はさきに日本人は「アメリカの軍事的属国であることを知っていながら、知らないふりをしている」と書いた。

これにはもう少し追加説明が必要だ。

日本人がほんとうに知らないふりをしているのは「日本が従者として主人におもねることを通じて、その没落を念じている」ということそれ自体なのである」
(引用終わり)

肝心なことを最初にいっておくと、内田には才能がある。しかし、肝心なことを間違っていて、その錯誤のもとに、才能だけで、おもしろおかしく状況を斬ってみせる。

日本人は、全員で米国の軍事的属国であると思っていないし、まして「知らないふり」などしていない。

内田の考えている以上に日本人の政治的民度は低く、「知らないふり」をする前に、状況を「知っていない」。とんだ買いかぶりである。この認識では、現下の消費税、原発、TPP、沖縄米軍基地、アホノミクス、といった大きな政治的課題で、自民党に政権を託した国民の行動は説明できまい。

また、その選択にあたって国民を洗脳・誘導し続けたマスメディアへの批判軸も生まれてこないように思われる。内田は、沖縄の米軍基地問題で、日本に残された唯一のカードは、世界に向かって、「アメリカの失点」を宣揚することだという。このあたりになると俄然面白くなる。「基地問題をめぐる外交交渉をめぐって、手札の限られた日本に許される「勝ち」は、「この交渉を通じてアメリカの国力を殺ぐこと」である。

「アメリカ政府高官たちを悪代官的な「憎々しげ」な対応に追い込み、日本人の反米感情に心理的エネルギーを備給し、アメリカとは「軍事力だけで属国を恫喝しているあくどい超大国」であるというイメージを広く国際社会に印象づけ、国際社会における威信を低下させ、覇権を脅かし、ついには「帝国の瓦解」を達成することである」
(引用終わり)

内田の論は面白い。しかし、そのような深い、面従腹背の日本の政治家、官僚、企業人の国で日本があったとしても、それに気付かない、そしてまんまと日本の術中にはまる米国政治ではない。

内田はあまりにも日本を買いかぶり、米国を見くびりすぎている。

かりにそのような日本であったなら、米国にとってはさらに都合がいいのであり、「いつまでも面従腹背でどうぞ、その間にわれわれは日本の富の最後の一滴まで奪い尽くすから」という結果になるに決まっている。

また、世界は日本に同情もしなければ、米国を批判したりもしない。近隣諸国を見ても、韓国も中国も、米国の植民地日本が都合がいいのである。

アジア諸国にとっては、米国という「帝国の瓦解」は、日本という「帝国の誕生」を意味する。日中間の覇権争いが戦争になれば、アジア諸国は太平洋戦争時と同様にハイパーインフレに見舞われる。

植民地日本という現実は、アジア諸国にはなんら不都合ではないのだ。また、ヨーロッパの冷厳なパワー・ポリティクス(power politics)にとっても、日本の植民地状態が不都合であることなど何もない。

ドイツと比較してもわかるとおり、それは米国から自立できない日本の政治的民度の問題にすぎない。選挙の度に、対米隷属の政党に勝利をもたらせ続ける日本人の問題であって、政治の修羅場に日々さらされているヨーロッパが嘴を挟む問題ではないのである。

ブログランキング・にほんブログ村へ

「日本がほんとうに「親米的」であり、かの国の行く末を真剣に気づかっているとする。

だとしたら、日本がまずなずべきことは、アメリカとその「仮想敵国」たちのあいだの和解を周旋し、アメリカが「世界から敬愛され、その繁栄を世界中の人が望むような国」になるように一臂の力を貸すことであろう。

そのために短期的にはアメリカ政府をきびしく叱正したり、怒鳴りつけたり、その協力要請を断ったり、という「教育的指導」があって然るべきである。

ところが、戦後65年間日本人は「そんなこと」を一度もしたことがない」
(引用終わり)

日本の為政者が「アメリカ政府をきびしく叱正したり、怒鳴りつけたり、その協力要請を断ったり、という「教育的指導」」をしてこなったことは、内田のいうとおりである。

それはそれほど米国が恐いからであり、隷属の見返りに、吉田茂、佐藤栄作、中曽根康弘、小泉純一郎などの政治史が物語っているように長期政権が保障されるからである。

内田が勘違いしているのは、隷属の為政者には、日本を愛する気持ちなど毫もないということだ。

大切にしているのは自分の保身であり、政権の命運である。長期政権と個人的な資産の増加があれば、日本などどうなってもいいのだ。

このニヒリズムは、ひとり政治家ばかりではなく、官僚、企業家、学者、メディア人と、この国の既得権益支配層のすべてに及んでいる。それを統括する原理はグローバリズムであり、弱肉強食の新自由主義である。

「イラク戦争開始時、ヨーロッパの多くの国がその政治的大義についても軍事的見通しにも、つよい疑念を投げかけていたときに、小泉純一郎はこれを世界に先駆けて断固支持し、ジョージ・ブッシュの背中を押して、アメリカを「出口のない戦争」に導き入れた。

私の判断では、小泉純一郎は「アメリカ帝国の没落」に最も大きな貢献を果たした外国人政治家の一人である。(中略)

また「規制緩和・構造改革」と称して、あきらかに日本の風土になじまないアメリカ的モデルを強権的に導入し、日本国民全員が痛みのうちに「だから、アメリカの制度はダメなんだ」という合意に達するところまで社会制度を破壊してみせた。

彼がその政策のすべてに失敗したにもかかわらず、いまだに根強い国民的人気を誇っているのは、彼がたぶん歴代の総理大臣のうちでいちばん「アメリカに対してひどいことをした」からである」
(引用終わり)

内田には悪いが、このあたりになると、ほとんど笑い話になってくる。

内田のような文化人がいるから、いつまでたっても日本は米国の植民地であり、国民の犠牲のうえに個人的な野望を遂げる政治家を排出し続けるのだ。

2001年、小泉政権の構造改革が始まって以来、日本は自殺者10万人強の自殺者大国になった。警察発表の年間3万人というのは、時の政権に気を遣った物語の数字にすぎない。

日本には年間15万人ほどの変死者がいる。WHOではその半分を自殺者としてカウントするので、WHO基準では、自殺者数は本当は約11万人ということになる。

これは実に他の先進諸国の10倍の数字になる。

他方、2003年、小泉政権下での株価大暴落によって、日本株を手に入れた外資は、その後、日本労働者の賃上げを許さず、会社の利益は内部留保に回し、配当金を手に入れ続けている。

ブログランキング・にほんブログ村へ

この続きは、 有料メルマガ『兵頭正俊の優しさ出前』 でご覧いただけます。

2011年10月1日より「兵頭正俊の優しさ出前」(月額:840円(税込)/配信サイト:まぐまぐ)を配信しております。

月・水・金・それに号外と発行しております。

「記者クラブ」メディアの情報操作と国民洗脳を対象化し、あなたを現在とは違うステージに招待します。

携帯の送受信の制限を考慮して、分割して送信するように改善しました。

価格以上の価値があると自信があります。ぜひ購読のご検討をお願い申し上げる次第です。

なお、別に無料メルマガ『兵頭正俊の知らなきゃ滅ぶニュースの真相』PC用 携帯用 を2011年8月29日より、「まぐまぐ」から配信しております。

無料で、ほぼ週刊です。

携帯の送受信の制限を考慮して、分割して送信するように改善しました。

ご登録をよろしくお願いします。

ブログランキング・にほんブログ村へ