世界には、まだ安倍晋三の靖国参拝の衝撃が残っている。

これを私的な問題として矮小化し、なるべく影響を小さくしたいのが与党と自民党補完勢力である。

自民党補完勢力はすべて安倍晋三の参拝を擁護する。

維新の会は、橋下徹が「このタイミングでの参拝しかない。(中略)東アジアの中で日本、中国、韓国の安定は、非常に重要だが、参拝を配慮することで、関係が正常化する状況ではない。(中略)外交上の配慮だけで、参拝の見送りをやめようと判断したのは、非常に合理的だ」と述べた。

みんなの党は、水野政策調査会長が「靖国神社への参拝は、個人の信仰や宗教観の問題で、他人がよいとか悪いとか論評する話ではない。近隣諸国との外交関係への影響を含めて、個人の判断であり、論評すべきではない」と述べている。

結いの党は、小野幹事長が、「個人的な参拝は、信教の自由の範囲内であり、安倍総理大臣自身が、心の問題として判断した結果だと受け止めている」と述べている。

かれらが根本的に間違っているのは、これはドイツ首相のメルケルが、ヒットラーやナチス党員の共同墓地が仮にあったとして、その共同墓地に墓参りに行ったら世界がどのように反応するか、といった想像力が皆無であることだ。

世界はなぜ怒ったのか。

靖国にはA級戦犯が祭られている。したがって、安倍晋三の靖国参拝は、戦後レジーム(ヤルタ・ポツダム体制、それに基づく戦勝五大国主導による国連体制)の戦後秩序の否定に繋がるのである。

したがって国連の常任理事国はすべて反対なのである。そのことに対して安倍晋三は非常に鈍感であり、厳しい認識を欠いている。そればかりではない。安倍晋三を批判する論者もこのことには触れない。世界が怒って日本は孤立した。だからよくない、といわんばかりだ。

維新・みんな・結いとも、よほど苦しかったと見えて、無残なほどの庇い方だ。

安倍晋三は小さな蛸壺のなかで考え、それはほとんど趣味といっていいほどの、周りの反応を無視した軽い動機である。政治家が、まして一国の首相が、自分の行動が及ぼす影響を推し量れないとしたら、これはもう三流政治家の証しである。

傑作なのは菅官房長官の次の説明である。

『ロイター』(12月26日付)は「首相の靖国参拝、関係国にはしっかりと趣旨を説明=菅官房長官」と題して、次のように報道している。

[東京 26日 ロイター] 菅義偉官房長官は26日午後の会見で、安倍晋三首相が靖国神社を参拝し、中国や韓国が強く反発していることについて、「韓国・中国は日本にとって重要な隣国であり、靖国参拝をめぐる問題で両国との関係全体に影響が及ぶことは望んでいない」とし、その趣旨を謙虚に説明していく考えを示した。

同盟国である米国が「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに失望している」との声明を出したことについても、「首相の参拝の趣旨がわからないなかでのものだ」とし、「しっかりと参拝の趣旨を説明し、理解が得られるよう努めていきたい」とした。

安倍首相がこの日参拝したことについて菅官房長官は事前に知っていたとしたうえで、「私人としての参拝であり、政府として立ち入るべきではない」との認識を示した。さらに、「中国・韓国の人々の気持ちを傷付けるものではなく、謙虚に、誠意をもって首相は説明していきたいと申し上げている」と説明した。

菅官房長官によると首相は玉ぐし料を私人の立場で納め、「内閣総理大臣 安倍晋三」と記帳した。官房長官は「内閣総理大臣たる私人としての安倍晋三」というかたちだと説明した。

官房長官はさらに首相の参拝について「自民党総裁選挙や衆院選で(第一次政権の)首相任期中に参拝できなかったことは痛恨の極みと国民に約束していた。そういう意味では国民の皆さんに約束してきたという思いもあったのだろうと思う」と指摘。この日の参拝は国民との約束を果たしたものだとの認識を示した。また自身が首相の参拝を「とめようとは思ってない」とし、引き留める考えはなかったことを明らかにした。

また、首相の参拝については「関係国にはしかるべき説明をしている」とし、「首相の(参拝の)趣旨は、国のために戦い、尊い命を犠牲にした方に尊崇の念を示し、不戦を誓い、平和の国を誓う。そういう趣旨を関係諸国に理解いただけるように、首相の談話を英文で海外にも発信した」ことを明らかにした。

今回の靖国参拝が政権に与える影響については「しっかり説明させていただければ、まったく問題ないと思う」とし、米国やオバマ大統領との信頼関係に影響があるとは「まったく思っていない」と語った」

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政治の劣化はここまで進んでいる。この傲慢さは、無自覚に発せられているだけに救いようがない。

「両国(中国・韓国 注:兵頭)との関係全体に影響が及ぶことは望んでいない」とは何か。望むと望まないとにかかわらず、影響が及んで怒っているのは、中国、韓国、台湾、米国、EU、ロシアなどといった国々である。米国の「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに失望している」との声明についても、「首相の参拝の趣旨がわからないなかでのものだ」とする。

この傲慢さは、政治家のみならず日本の既得権益支配層に共通のものだ。自分が悪くても謝罪しない。「誤解を招いた」とまるで相手に非があるような言い方をする。誤解しているのではなくて、正しく理解したうえで批判しているのだ。

安倍晋三は「内閣総理大臣 安倍晋三」と記帳しているのに、それが「私人としての参拝であり、政府として立ち入るべきではない」とは何か。

「内閣総理大臣たる私人としての安倍晋三」となるに及んでそのバカさ加減は頂点に達する。「内閣総理大臣」は公人であり、国際紛争の火種になっている事案に介入するとき、世界は当然公人の行動と理解する。

前韓国大統領李明博が竹島に上陸すれば、それは公人としての政治的行動である。韓国政府の誰ひとりとして「大統領たる私人としての李明博」の行動などとバカなことはいわない。

繰り返すが、日本の政治はここまで劣化したのである。「この日の参拝は国民との約束を果たしたものだ」とはどこまで傲慢な政治家たちだろうか。 TPP参加問題を初め、選挙公約を裏切っておきながら、「国民との約束を果たした」とは滑稽である。自分が何を喋っているか、わかっていないのだ。

また、「首相の(参拝の)趣旨は、国のために戦い、尊い命を犠牲にした方に尊崇の念を示し、不戦を誓い、平和の国を誓」ったものだという。

しかし、安倍晋三がやっていることはこの正反対のことである。NSC、特定秘密保護法を通した後に、共謀罪、通信傍受法、国家安全保障基本法、防衛大綱の見直し、自衛隊の海兵隊化とやる。

TPP参加をやった後に集団的自衛権を確立し、新ガイドラインで世界の紛争地へ自衛隊を送り出す。憲法改悪も決して諦めてはいない。この具体的な行動のどこに「不戦の誓い」や「平和国家への誓い」があるか。

各国への影響は「しっかり説明させていただければ、まったく問題ない」し、米国やオバマ大統領との信頼関係に影響があるとは「まったく思っていない」という。舌を巻くほどの傲慢さである。

しかも、11月に、衛藤首相補佐官が、靖国参拝をめぐる意見交換のため訪米していた。そしてラッセル国務次官補などと協議をしていた。

そのとき、参拝すれば「日米関係を害するだろう」、「オバマ大統領が理解を示すことはない」、「日本の評判を落とし、日本のアジアにおける影響力低下を招く」と、強く反対されていた。

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