6月24日に行われた英国のEU残留・離脱をめぐる国民投票。英国では、開票と同時に大接戦が続いた。当初、投票率が上がれば残留派に有利といわれていた。これはすぐに間違いだったことがわかった。また、残留派が多いといわれた若者のなかにも、相当に離脱派がいることもわかった。

結果としてはEU離脱に決まったわけだが、投票率は71.8%で、1992年以来、英国では最多の投票者数となった。

開票結果

EU離脱支持 51.9%(1741万742票)

EU残留支持 48.1%(1614万1241票)

約127万票差だった。もともとこの国民投票を言い出したのは、残留支持のキャメロンなので、責任が問われることになる。自縄自縛とはこのことか。

ただ、この国民投票の結果を逆手にとって、EUに残留するための条件闘争に入り、英国の、EU内での特権的な立ち位置をさらに強化する戦術もあった。(この後、キャメロンの辞任発表があり、すべてを後任者に丸投げして逃げ出したことがわかった

Cameron

英国のEU離脱に関して、こんなツイートが目についた。

「小池百合子

発端は13年1月、キャメロン保守党がEU離脱を問う国民投票の実施をマニフェストとしたこと。何のための代議制か。英国の亀裂は深い。Divide & Ruleは大英帝国以来の大政策のはずだが、自らをDivideするとは…。EU…

ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

英国民投票、ジョンソン氏に大きな勝利 次期首相の声も
#EU離脱派を引っ張ってきた、前ロンドン市長のジョンソン氏。同氏はキャメロン首相の有力後継者として浮上してきた。

知足的隠遁者

残留派女性議員(労働党)暗殺への同情も、離脱派のローマ新市長誕生で吹き消され、オランダやデンマークなどでの国民投票問題、分離独立をからめたスコットランドとスペインの問題が圧し掛かる。メルケルも選挙に惨敗しレームダック化した。EUは数の力で東欧が支配し、その背後にオバマが。

低時給、不安定雇用、家賃高騰に喘ぐ国民に「政府の経済政策を否定するなら、今の雇用すら失う」という恫喝が英国では厳しい拒否に遭った。米大統領選挙も同じ構図。メルケルの与党が惨敗し第三党に落伍したのも同じ原因。日本人だけが安穏としているって、事実だろうか?

確かにキャメロンは、国民投票を軽く考えていたのかもしれない。残留派の勝利を予測していたのではないか。今は、やってしまったことを後悔しているだろう。

早くも離脱派の前ロンドン市長ジョンソンが、キャメロンの有力後継者として浮上してきた。

6月16日の、労働党の女性下院議員ジョー・コックスの暗殺も、同情を引くどころか、残留派の謀殺説も出てきて、逆効果になった可能性がある。

「政府の経済政策を否定するなら、今の雇用すら失う」という恫喝も、日本なら通じるが、英国では通じなかった。

『Foreign Affairs Report』(2016 NO.5)に「苦悩するヨーロッパ」という鼎談が載っていた。

国民投票前の5月の鼎談である。今日のメルマガでは、紙幅の都合で、アナンド・メノン(キングス・カレッジ・ロンドン 教授(ヨーロッパ政治))の発言のみを紹介する。

アナンド・メノンは語っていた。

6月に予定されているイギリスでの国民投票で国民の判断を仰いだ後、政府が何をするかは法的に定められていない。つまり、EU脱退を市民が支持したとしても、イギリス政府が欧州連合に対して離脱を申し出なければならないと法的に義務づけられているわけではない。どうするかはイギリス政府の判断に委ねられる。

脱退が支持されても、イギリス政府がそのまま脱退申請のプロセスをとるとは考えにくい。例えば2%といった非常に僅差で(脱退を支持する)結果が出た場合に、イギリス政府は(脱退を申請するのではなく)、むしろ、(残留を前提に)ブリュセルでイギリスとEU間の問題の是正を再度試みるかもしれない。

EUからの脱退をブリュッセルと交渉して泥沼にはまるよりも、問題を是正して残留する方がはるかに簡単だからだ。

一方、仮に脱退の反対が賛成を10%の差で上回ったとしても、政治的理由から考えて、問題が消え去ることはないだろう。今後の指導者交代の時期にも、保守党は依然として「ヨーロッパ」問題に支配され、党指導者候補が再び(EU脱退の)国民の真意を問う国民投票を実施すると表明して、指導者に選ばれるというシナリオさえ想定できる。

実際、保守党の指導者ポストを選挙で勝ち取るには、「イギリスとEUの関係が適切ではない」と示唆することが最善の戦略であり、国民投票を実施して残留する判断が示されたとしても、指導者への信頼性は高まることになる」(『Foreign Affairs Report』2016 NO.5)

メノンの発言は、国民投票の前のものである。しかし、幾つもの優れた示唆がある。

国民の判断は確かに離脱と出たが、「政府が何をするかは法的に定められていない。つまり、EU脱退を市民が支持したとしても、イギリス政府が欧州連合に対して離脱を申し出なければならないと法的に義務づけられているわけではない。どうするかはイギリス政府の判断に委ねられる」ということだ。これを指摘した日本の専門家はまだいない。非常に重要な指摘だ。

キャメロンには、離脱の開票結果を逆手にとって、EU内での特権的な位置獲得のための、さらなる条件闘争に進む修羅の道もあった。

つまり焼け太りである。英国の背後の、米国もキャメロンを残したかったであろう。しかし、お坊ちゃんの若いキャメロン(49歳)は、乱の政治家ではなかった。さっさと楽になる道を選んだ。

アナンド・メノンは続けて語っている。

「もう一つ国民投票について興味深い点を指摘しよう。それは、現状で「EUからの完全な脱退を望む人」と「片足を抜くべきだ」と考える人の間でキャンペーンが展開されていることだ。そこに「残留することの利点を重視する」勢力はいない。離脱の危険を警告するキャンペーンはあっても、留まることのメリットを説く勢力はいない。

イギリスが他のEUメンバー国とは少しばかり違っている。他のメンバー国は、EUとの結びつきを肯定的にみなす政治的ストーリーをもっている。

(ベルギー、西ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルク、オランダという)現在のEUの原加盟国にとっては、ヨーロッパの平和を維持するために欧州統合が必要だった。南ヨーロッパ諸国にとっては民主主義の確立が、東ヨーロッパ諸国にとってはロシアから逃れることが加盟の目的だった。

一方、イギリス人にとっては欧州統合はあくまで経済プロジェクトであり、われわれは経済的目的から欧州連合に参加した。イギリスは取引を重視しているし、自分たちのアイデンティティの一部にEUは入ってこない。イギリスのEUに関する議論が他のメンバー国のそれとは大きく違っているのはこのためだ。

国民投票がどのような結果に終わろうとも、イギリスがEUのメンバーシップになじむことはありえないし、われわれは今後も気乗りのしないクラブメンバーのままだろう」

EU離脱派には「片足EU離脱派」がいる。つまり、離脱を振りかざして、残留するための条件闘争をやるものである。

しかも国民投票には法的な縛りはない。ところが、キャメロンもメディアも離脱は当たり前とみなし、キャメロンにいたっては早々と辞任し、すべてを放り投げてしまった。世界中に混乱を呼び起こし、これからスコットランドの独立にも対処していかねばならない。

何という無責任。何というナルシズム。気になって年齢を調べたら、われらの安倍晋三より12歳も年下の49歳である。政治経験も乏しく、教室で覚えたドグマを武器に、EU離脱の国民投票もやれたことがわかる。

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