米国でポピュリストが暴れている。大統領候補のドナルド・トランプである。

(現代のポピュリズム)
(現代のポピュリズム)

かれは確かに、その場で大衆に人気を博しそうなテーマに集中してしゃべる。それが今のところ成功している。

「すべてのイスラム教徒のアメリカ入国を拒否すべきだ」
「メキシコ人は麻薬や犯罪を持ち込む」
「メキシコは問題のある人間を(米国に)送り込んでいる。彼らは強姦犯だ」
(メキシコに対して)「国境に万里の長城を造る」
「彼(マケイン)は戦争の英雄ではない。私は捕虜にならなかった人が好きだ」「世界は俺を中心に回っているんだ!」
(グラハム議員(共和党)に対して)「ばか」「間抜け」
「おい! そんな小汚い子供より、俺を先に助けろ! 金ならいくらでもやるぞ!」
(共和党候補フィオリーナ氏に対してのコメント)「あの顔を見てみろよ。だれがあんな顔の奴に投票するってんだ?」
「移民なんかくそくらえ」

読んでいるうちに寂しくなる。ただ、メディアや国民の反応も計算したうえでのパフォーマンスなのである。

こんなこともいっているから紹介しておこう。

「日本人はウォール街でアメリカの会社を買い、ニューヨークで不動産を買っている。多分、マンハッタンを自分たちのものにしたいんだな。日本人と競り合っても勝てる見こみはない。どうみても彼らはこちらをコケにするためだけに法外な金額を払っているとしか思えない」

ドナルド・トランプに対する、「今や国家安全保障への脅威」、「トランプ氏の選挙キャンペーンは見せ物」といった揶揄が、さらにかれの人気を煽り立てる。

ポピュリズム(大衆迎合主義)は、状況的なキーワードになっている。

ひるがえって日本の政治状況を見てみると、ポピュリズムにも及ばない劣化した野党を見ることになる。「おおさか維新の会」は、もはや自民党と何が違うのか、探すのが困難なほどだ。橋下徹から安倍晋三批判を聞いたことがない。

最大野党の民主党は、政権与党の自民党と酷似した政策しか打ち出さない。それは右派ポピュリスト政党ですらない。それで自民党に絶望した国民には、奮い立つ夢がないのだ。

それですっかり自民党は民主党をなめきっている。自民党は暴走を繰り返し、民主主義を破壊している状況がある。

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ポピュリズムが席巻する世界的な現象に対して、『エコノミスト』(2015年12月12日)が「恐怖をもてあそぶ」というタイムリーな記事を載せている。

「(前略)米国では今週、「イスラム国」(IS)に忠誠を誓っていた夫婦がカリフォルニア州サンバーナディノで14人を殺害した事件の後、ドナルド・トランプが、米国の国境をイスラム教徒に対して「全面的かつ完全に」封鎖するよう呼びかけた。この共和党大統領候補指名争いの先頭走者はその前に、モスクの閉鎖と米国のイスラム教徒の登録を提案していた。「他に選択の余地はない」と彼は言った。

フランスではトランプ氏の相手方は極右の国民戦線(FN)(党首はマリーヌ・ル・ペン 注 : 兵頭)である。先月、ISがパリにテロ攻撃をかけた後、12月6日に行われた地域圏選挙の第1回投票で、FNは、僅差で一般投票の最大シェアを獲得した。FNは13選挙区のうち6選挙区で第1位だった。FNの指導者マリーヌ・ル・ペンとその姪は、それぞれ40%余を獲得した。

トランプ氏とル・ペン氏だけではない。米国および欧州の一部での右派ポピュリストへの支持は、第2次大戦後その比類を見ない。テロを背景にして、これらの「恐怖利用者」は、西側社会が当然のものとしてきた開放と寛容に対して重大な脅威を投げかけている。

怒れる老人たち

最近のテロ攻撃の前でさえも、右派ポピュリストは実績を残していた。10月以降、トランプ氏およびテッド・クルーズ、ベン・カーソン――攻撃性はやや少ないが過激性ではほとんど劣らない――はみんな一貫して世論調査で、共和党有権者の合わせて50%以上の支持を得ていた。

欧州ではポーランドとハンガリーでポピュリストが政権を握っており、スイスとフィンランドでは連立の形で政権に入っている(ギリシャのシリザ=急進左派連合=のような左派は含まない)。彼らはフランスとオランダで世論調査のトップを占め、その支持率はスウェーデンでは記録的水準にある。

ル・ペン氏は2017年のフランス大統領選挙で決選投票にまで進みそうだ。ひょっとすると彼女はそこで勝つかもしれない。

ポピュリストはそれぞれ異なるが、彼ら全ての基盤は、経済的、文化的な不安感である。欧州での失業そして米国での賃金の停滞が、中高年の白人労働者階級を傷つけている――彼らの雇用はグローバル化とテクノロジー進歩で脅かされている。

彼らの下には移民および「たかり屋」がいて、福祉給付を奪い、犯罪に手を染め、現地の慣習を軽蔑している――と彼らは不満を持っている。彼らの上にはワシントンとブリュッセルに利己的なエリートがいて、先の金融危機と欧州の経済停滞の責任者であるのに、決して自分たちの間違いの責任を取るようには見えない。

ジハーディスト(聖戦士=イスラム過激派)のテロが、こうした憤まんの火に油を注いでいる――テロは、ポピュリズムの「魅力」を広げる可能性さえある。ISが残忍なテロ攻撃に霊感を与え、あるいは攻撃を組織するときはいつも、移民および外国人の恐怖が増大する。テロリストが成功すると(時にはそれが避けられない)、エリート支配層の不適格性が浮き彫りになる

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この記事は状況的ですばらしい。しかし、イスラム教徒の移住やテロへの恐怖に限定して、政治家や政党を見るのは危険である。

わたしは米国のトランプと、フランス国民戦線(フランス語: Front National; FN)の、マリーヌ・ル・ペンとは、同列に右派ポピュリスト政治家として括ることはできないのではないかと思う。

(国民戦線党首 マリーヌ・ル・ペン)
(国民戦線党首 マリーヌ・ル・ペン)

たしかにマリーヌ・ル・ペンには、極右らしき政策もある。しかし、多くは、2012年以前の政策から印象づけられた誤解である。

今は福祉の充実や弱者保護、中小企業への減税、製造業を守るための関税の徹底などを政策として掲げている。日本の安倍晋三などよりも、遙かに魅力的な政治家である。右派だけでなく左派にも支持者がいるのは決定的だ。トランプとは政治の質が違っている。

面白いのは、マリーヌ・ル・ペンが、ロシアのプーチンを評価していることだろう。ウクライナ問題のとらえ方も冷静であり、ウクライナ政権を米国の傀儡政権とみている。米国・NATOの反ロシア路線も批判している。

フランスの国家主権を取り戻すため、EUの基本条約の見直し、ユーロ圏からの離脱、フランス独自の農業政策の構築、EUの共通農業政策からの離脱といった政策を見ると、むしろ英国最大野党である労働党の、党首ジェレミー・コービンに似ている。

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コービンの政策は、富裕層に対する課税強化。企業トップの報酬に上限を設ける。所得の再配分に社会保障の支援強化、企業への優遇税制撤廃。法人税を引き上げる。NATOからの離脱。中東でのISIS空爆反対。国防予算の縮小。授業料の無償化などで、これをポピュリズムと呼ぶことはできない。むしろ反グローバリズムと呼んだ方が、より剴切であろう。

こうして見てくると、日本の野党がいかに魅力がないかが、わかる。日本の極右はまるで1%の下僕のようであり、経済思想はグローバリズムである。

「トランプ氏とル・ペン氏だけではない。米国および欧州の一部での右派ポピュリストへの支持は、第2次大戦後その比類を見ない。テロを背景にして、これらの「恐怖利用者」は、西側社会が当然のものとしてきた開放と寛容に対して重大な脅威を投げかけている」という。しかし、「西側社会が当然のものとしてきた開放と寛容」に大きな疑問が投げかけられている。

たとえばイラク、アフガニスタン、リビア、シリアなどが、「西側社会が当然のものとしてきた開放と寛容」という価値観を肯定するだろうか。

あるいは、わたしたちの日本である。日米地位協定ひとつとっても、それは開放でもなければ寛容でもない。徹底した民族差別であり、不寛容である。

欧州のポピュリズムにあるのは、「恐怖の利用」といった政治技術よりも、「反グローバリズム」と捉えた方がいいように思われる。グローバリズムへの、経済的、文化的な不安感が根底にある。多くの場合、欧州のポピュリストはナショナリストであり、ワシントンやブリュッセルの締め付けや要請に反発を示している。

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