米国の干渉さえなければ靖国参拝の超国家主義者である。しかし、米国に叱られると、直ちに対米隷属主義者に変わる、というのが、安倍晋三の正体である。要するに現在の日本は、お坊ちゃんが首相を務めているのである。
安倍晋三は、今回も河野談話の作成経緯を検証すると気張ってみせたが、米国の反発があると、すぐに河野談話の継承にひっくり返った。この程度のナショナリズムなのだから、最初からいわなければいいのだ。その知恵すらないのである。
安倍晋三にはウクライナ問題について、EUや米国から何の情報も入っていない。外務省も国益に沿った情報を取る能力もない。日本政府がやっていることは、対米隷属の原則に沿って、米国に従っているだけである。
プーチンは、18日に、上下両院の議員や地方知事などを前に、クリミアのロシア編入について、50分近い演説をした。
演説のポイントは次のとおりである。(番号は、必ずしも演説の順序を示すものではない)
1 クリミア自治共和国の住民投票は、82%という高い投票率で、民主的で合法的だった。そして96%がロシアへの編入に賛成した。これは十分に説得的な数字である。編入要請は無視できない。ロシアとクリミアは、同じ歴史と同じ誇りに満ちている。
2 クリミアの民族構成は、220万のクリミア市民のうち、150万人がロシア人。35万人がウクライナ人。その大半にとって母語はロシア語である。29~30万人がクリミア・タタール。住民投票の結果、クリミア・タタールの無視できない割合が親ロシア的であることも示された。
3 1954年のロシアからウクライナへのクリミア移管決定(フルシチョフがクリミアをウクライナへプレゼントしたもの)は違法だった。ロシアにはクリミアへの潜在的領有権がある。
4 クリミアは、分かつことのできないロシアの一部である。ソ連崩壊後にクリミアがウクライナに留まったことを、ロシアは「奪われた」とこれまでも感じてきた。
5 クリミアは、われわれすべてにとり歴史的な重要性を持つ。国民の心のなかでは、クリミアはロシアといつも不可分の存在だったし、今もそうだ。
6 今回、ロシアは、ウクライナへ軍事介入をしていない。衝突も死者もなく、これは侵略ではない。われわれはウクライナのさらなる分割を目指してはいない。しかし、ウクライナ東部のロシア系住民を、ロシアは保護する権利がある。
7 クリミアのロシア併合を現実化させたのは、米欧の侵害が理由だ。西側は一線を越え、乱暴で無責任に、素人のように行動した。ウクライナ内で親欧米派を支援して政変を招いたのである。
8 米国とNATO加盟国は、ロシアが利害を持つ地域に侵入し、「ロシア囲い込み」の政策を取っている。何事にも限界がある。ウクライナで米欧は一線を越え、非礼かつ無責任、大人げない行動を取った。
9 ロシアは、対ロ制裁には報復せざるを得ない。
10 クリミアの次は、他の地方がロシアに併合されると叫び、ロシアを恐ろしい国だという人々を信じてはならない。クリミアはわれわれの歴史的遺産であり、今、現在それはロシアに帰属することでしかあり得ない。
11 西側諸国はコソボがセルビアから独立するのは認めたが、クリミアには同等の権利がないと否定するのか。
12 ヤツェニュク首相のウクライナ現政府は、何もコントロールできていない。国家主義者と反ユダヤ主義者、ロシア嫌いの「急進主義者」が率いている。ウクライナ新政権は、ネオナチである。
さらに詳しく知りたい方は、「Togetterまとめ」の「クリミア編入を表明したプーチン大統領の演説」が便利である。 http://bit.ly/1l5LfrV
以上の演説の後、プーチンは、クリミア自治共和国のアクショノフ首相、コンスタンチノフ議長、セバストポリの市長とともに署名式に臨み、クリミアの編入に関する条約に署名した。
今回のクリミア編入については、米国のロシア専門家は見通しを誤ってしまった。クリミアの多様性を挙げ、クリミアが分離独立することはあり得ない、と語ってきた。たとえば、米ラトガース大学教授のアレクサンダー・モティル(政治学者。専門はウクライナ、ロシアの政治)は、「ウクライナ危機とロシア~プーチンはどう動くか」のなかで、次のように語っていた。
「クリミアはどうだろうか。この地域は一般に言われるほど親ロシア的ではない。クリミア北部の多数派はウクライナ民族だ。この地域の人口の15―20を占めるタタール人も、ロシアに併合されるというシナリオを拒絶している。一方で、黒海艦隊がいる南部が非常に親ロシア的なのは事実だろう。
私は個人的には、クリミアが分離独立を試みるとは思わない。地域内に非常に大きな多様性を抱えている。
プーチンが強引にここをロシアに併合すれば、私にとっては驚きであり、衝撃だ」((『Foreign Affairs Report NO3』))
こういうのは、ほとんど米国政府の願望を代弁しているのにすぎない、とわたしは指摘してきた。
さて、プーチンの演説に戻ろう。この演説には、今後、再び冷戦時代に戻らないための多くのヒントがこめられている。
世界各国の政府が、今、賢明に分析・検討しているものと思われる。
演説のなかで、プーチンは、西側諸国はコソボがセルビアから独立するのは認めたが、クリミアには同等の権利がないと否定するのか、と批判した。
これは、実際、そうなのだ。EUと米国が、クリミアの自決に反対するのが身勝手なのである。東西ドイツも再統一したではないか。そのとき、ロシアは再統一を支持した。
今度はドイツが借りを返すべき番だ。沖縄も日本に復帰した。どうしてクリミアとロシアにはそれが許されないのだろう。
プーチンはまた、ロシアの脅威を説いたり、他の地域もクリミアの二の舞になると吹聴したりする者たちを信用してはならない、と語った。
ロシアはウクライナの分断は望んでいないし、必要としてもいないとも語った。
これは何を意味しているのだろう。それは米国の動機が、キエフの米傀儡政権を通じて、クリミアのロシア海軍を黒海海軍基地から追放し、米国の海軍基地を建設することにあったからだ。
クリミアがロシアに編入されてしまえば、米国のすべての目論見は水泡に帰する。したがって、ウクライナ東部のロシア系住民が迫害に遭わない限り、プーチンはウクライナに軍を出さないと見ていい。米国のロシア包囲網は、すでに阻止したからだ。
わたしが以前のメルマガで指摘したように、そして今回、プーチンが語ったように、ウクライナの暫定政権には「ネオナチ、ロシア嫌い、反ユダヤ主義者」が含まれている。問題はこのならず者政権が暴走しないか、ということだ。
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