1 伊藤詩織の『Black Box』が問いかけたもの

米カリフォルニア州サンフランシスコ市(市長はエドウィン・M・リー)が、慰安婦像と碑文を公共物化したことについて、姉妹都市の吉村洋文・大阪市長が、24日に、年内に姉妹都市関係を解消することを明言した。

率直な感想をいわせてもらえば、短気は損気である。
大阪もサンフランシスコもいずれは市長が代わる。
大阪に慰安婦について吉村とは違う考え方の市長がなるかもしれず、また、サンフランシスコも同様である。

吉村のような若造の短慮で、60年も続いた姉妹都市関係を解消するようなことがあってはならない。

喧嘩したから仲良くなれるということもある。
我慢強い話し合いで臨むのがいい。

けっして姉妹都市を解消などしてはならない。

こんなツイートが目についた。

立川談四楼

サンフランシスコとの姉妹都市解消は大阪市長さん、短慮にして狭量というもんですぜ。
粘り強く交渉すべきところ、地元市議に4回も「恥を知れ」と言われるなんて、活動家は何を言ったのかね。
つまり怒らせ嫌われたわけだ。
さあ踏ん張りどころだ。
60年の親交が水泡に帰すことだけは避けてくれ。
頼む。

ブルドッグ

これねぇ…。

本来は中立で日本政府や大阪の立場にも理解を示していたサンフランシスコ市が、以後完全に日本の一部活動家を毛嫌いするようになり、慰安婦像の設立が決定的になった瞬間。

それほど彼らは無礼で支離滅裂で見るに堪えなかった。
議論以前の問題。

結果がこれですよ。

さて、伊藤詩織の『Black Box』については、5回で終わりにするつもりであった。
しかし、『朝日新聞』がデートレイプドラッグの問題を特集するなど、さらに『Black Box』の影響は拡大深化している。

ただ、朝日の取り組みは腰が引けている。デートレイプドラッグを採り上げるのはいいが、3回連続して採り上げながら、肝腎の、山口敬之の「準強姦」もみ消し事件については一切触れない。これはどういうことだろうか。

きむらゆい

デートレイプドラッグを3日連続特集、25日夕刊にはハリウッドの性被害にも紙面を大きく割いた。
なのに、肝心の詩織さん事件、安倍氏友人山口敬之氏のドラッグレイプに関しては言及なし。
なぜ腰が引けているのか?
朝日に今回の特集への応援と、詩織さん事件報道要請を。
03-3545-0131

大学の紀要ではないのだ。
ジャーナリズムがデートレイプドラッグを特集しながら、肝腎の山口敬之の「準強姦」もみ消し事件を問題にしないとなると、国会よりも週刊誌よりも腰が引けていることになる。
権力の監視がきれいにそぎ落とされているではないか。

わたしも最後は駆け足になったところがあり、ここにきて6回目を書くことにした。

伊藤詩織の『Black Box』は不思議な本である。
本人はおそらく意識していないのであるが、次のような状況的な位置を占めている。

(1)山口敬之の「準強姦」もみ消し疑惑事件は、安倍晋三による、国家・国政の私物化、身内びいき・縁故主義(ネポティズム)の、象徴的な事件になっていること。

(2)この「準強姦」もみ消し事件によって、この国の男性優位、女性差別の現実を剔抉したこと。

(3)性被害者に対する警察の様々な対応の仕方を問題にしたこと。

伊藤詩織は、おそらく(1)に関しては、意識していなかったと思う。
そういった意味では、彼女の立ち位置は、自分で主体的に選んだものではない、強いられたものだ。

2 デートレイプドラッグを使った性犯罪

伊藤詩織は書いている。

先生のリサーチは、患者のMさんに出会ったことから始まる。
Mさんは仕事が終わってから会社の上司2人、女性の同僚1人と飲みに出かけた。
意識が戻った時にはホテルで裸にされ、上司2人から性的暴行を加えられていたという。
アルコールに強い彼女は、記憶を亡くすほど飲んでいなかったにもかかわらず、記憶を失っていた。

長井先生は、これをきっかけにアメリカや日本の文献などを調べ、デートレイプドラッグの問題を深く認識するようになる。
アメリカの強姦救援センターなどの調査を読んだ際、先生の目にとまったのが、「被害者から学ぶ」というコラムだ。
ソコにはおおよそ、次のようなことが書かれていたという。

(1)事件はレストランとかパーティーとかクラブといった場所で起こる。
そこで何者かが飲み物に薬物を入れ、彼女らが飲み物を飲んだ後、気分が悪くなったり感覚を失ったような感じになる。
しかし、彼女らが数時間後に目が覚めたときには別の場所にいる。
つまり、薬物を入れた場所と強姦が行われた場所は異なっている。

(2)彼女らが再び意識を取り戻したとき、自分が強姦されたのかどうかはっきりしないことがある。
服を脱がされていたり、衣服や体に精液が付着していたり、あるいは膣や肛門に裂傷やひりひりした痛みを伴う傷を受けたりということで痕跡を見出すこともある。

しかし、すべての被害者が重大な記憶の欠落を報告している。
何人かの被害者は、短くてとぎれとぎれの覚醒した時期を覚えているが、それでも彼女たちの意識がないとき、彼女たちに何がなされたのか、誰がかかわっていたのか、何人の人がそこにいたのか思い出すことができない。

(3)被害者がこうした犯罪を警察に訴えても、記憶がはっきりしないという理由でほとんど却下される。

ある被害者は次のようにいわれたと語った。
「相手の記憶はしっかりしている。
なのにあなたは何も覚えていない。
証拠もない。
これでこの件は終わりだ」と。

被害者からも犯罪現場からも決定的な物的証拠は得られない。

ここに、薬物を利用した強姦事件の問題点が凝縮されている、と先生は感じた。

この文章を読んだだけで、いかにデートレイプドラッグを使った性犯罪の立証が困難であるか、逆にいうと卑劣な男たちが使いやすい犯罪であるかがわかる。

まとめるとこうである。

(1)デートレイプドラッグを飲まされた被害者は、一時的に記憶を失ってしまう。
犯行場所はレストランとかパーティーとかクラブといったアルコールが出る場所である。
犯罪者はそこから気を失った女性をホテルなど別の場所に運ぶ。
つまり薬物を飲ませた場所と強姦が行われた場所は異なっている。

(2)被害に遭った女性は、自分が強姦されたのかどうかはっきりしないことがある。
しかし、強姦の痕跡は見出すこともある。

(3)被害者がこうした犯罪を警察に訴えても、記憶がはっきりしないという理由でほとんど却下される。
被害者からも犯罪現場からも決定的な物的証拠は得られない。

つまりデートレイプドラッグは、犯罪者にきわめて都合のいい薬なのだ。

日本の取り組みはきわめて遅れている。
たとえば米国では次のように取り組まれている。

アメリカでは、政府機関がインターネット上に「デートレイプドラッグ」についての警告サイトを展開して久しい。
現在では、司法省、保健福祉省、FBI(連邦捜査局)NIH(国立衛生研究所)、州政府、教育機関などのパブリックサイト、Wikipediaや医療関係の民間サイトが警告啓蒙サイトを立ち上げている。

日本でも、現在の『朝日新聞』のように、時々、啓蒙警告に努めてほしいものだ。
また、教育現場でも、中高で年に一度は指導していく必要があるだろう。
卒業までに3回頭に入れたら、いざというときに何も知らないのとでは、だいぶ対応の仕方が違ってくる。

さらに国会でもこの問題の検証に立ち上がったので、事件の究明のほかに、上記の米国の例を参考にしながら警告啓蒙の具体化を図ってほしい。

・・・・・・・・・━━━━━━☆

※メルマガのご案内

こんにちは!

有料メルマガ『兵頭正俊の優しさ出前』を配信している兵頭と申します。

2011年10月1日より『兵頭正俊の優しさ出前』(月額:864円(税込)/配信サイト:まぐまぐ)を配信開始しました。

月・水・金・それに、ほぼ週に1回の号外を配信しております。
実質、週に4回の配信になります。

わたしの強みは、商業ジャーナリズム、「記者クラブ」メディアから自立していることから、政権にも企業にも遠慮なく真実を語る位置を確保していることです。

わたしは若い頃に吉本隆明の『試行』に作品を発表していました。
この『試行』自体が、そのような問題意識に貫かれた同人誌でした。
位置のとり方の大切さはわかっております。

また、教師をやっていたことから、わかりやすく表現することには通じており、多くの読者の方からわかりやすいという声を聞いています。

優れた情報と、新しい状況の分析・とらえ方を提供します。
そして、「記者クラブ」メディアの情報操作と国民洗脳を対象化し、あなたを現在とは違うステージに招待します。

確かに、わたしはテレビなど晴れがましい舞台には出ておりません。

しかし、わたしの書いた文章は、グーグルの検索でもあちこちで上位に出ております。

ツイッターでは3万を超えるフォロワーに支持されており、無料メルマガ『兵頭正俊の知らなきゃ滅ぶニュースの真相』は殿堂入りを果たしております。

価格以上の価値があると自信があります。
ぜひ購読のご検討をお願い申し上げる次第です。

なお、別に無料メルマガ『兵頭正俊の知らなきゃ滅ぶニュースの真相』PC用と、内容は同じ 携帯用 を2011年8月29日より、「まぐまぐ」から配信しております。

無料で、ほぼ週刊です。
(体調を崩したとき、それに正月や5月の連休、お盆には、お休みをいただきます)

携帯の送受信の制限を考慮して、分割して送信するように改善しました。

ご登録をよろしくお願いします。

なお、メルマガはテキストファイルであり、このブログ掲載の画像などはありません。

また、このブログ掲載の文章は、メルマガの一部であり、ブログ用に編集してあります。
© GIHYO