1 安倍司法に追い込まれる

伊藤詩織の『Black Box』(文藝春秋)についての、今日は4回目である。
思ったより長くなったのは、平易な言葉で書かれた内容が示唆に富み、現在の腐敗した司法私物化の状況、無法者が跋扈する状況を的確に抉っていたからだ。

この本をまだ読んでいない方は、ぜひ読まれることをお勧めする。
彼女はまだ28歳であるが、実によく考えており、事件を通じて語ることが日本の暗部を剔抉していた。

これまでのまとめ

(伊藤詩織は、米国の大学でジャーナリズムと写真を学び、ジャーナリストの仕事を探していた。
帰国後に就職を餌に、官邸お抱えレイピスト山口敬之に酒の席に呼び出され、薬を酒に混入(詩織とわたしの見方)されて、意識を失い、強姦される。
やっとの思いで警察に相談し、妹や両親にも打ち明ける。

その後、詩織と山口との緊迫した電話やメールでのやりとりが続く。
また、詩織は弁護士、警察との対応が続く。
そこは一気に読ませるが、山口が、詩織に法的な対応をとられることを警戒していることがありありとわかる。
しかし、何回かの詩織とのメールやりとりのなかで、ついに山口は性交渉があったとの尻尾をだしてしまう。

そんなとき、捜査員のAから、山口を米国から帰国した空港で逮捕するとの連絡を受ける。
詩織は喜ぶが、4日後には、それが警視庁トップの指示で不可能になったことを知らされる)

伊藤詩織は、ニューヨークでジャーナリズムを学んでいたときに、ハウスメイトだった友人を訪ねてイスラエルにいた。
そこへ事件を担当していた輪署のAの上司から、電話がある。

これからは警視庁捜査一課が事件を担当するという。
このあたり、すでに警察が不起訴に向かって政治的に動き出したことをうかがわせる。
捜査態勢の政治的な格上げである。

日本に帰国すると、警視庁に呼ばれる。
そしてこの件について4、5名の陣容で動いていくという。
「もう任意でできる捜査はすべてしたはずなのに、輪署とはずいぶん違う陣容だった」。
わたしも同じ感想をもった。
明らかに不起訴に向かって格上げされたのだ。

これから驚くべきことが起こる。
相手の山口の弁護士が示談交渉をしたいといっているので、示談の弁護士を紹介すると捜査官がいったのだ。

これはただのアドバイスですが、あなたが直接交渉しない方がいい。
弁護士を通して話をするべきです。

(中略)

一気に話してすみませんが、弁護士は誰かに相談していますか? 被害者専門の弁護士がいて、その先生に頼むと基本的にはタダでやってくれます。
国費が出るので。

もし不安だったら捜査官が一緒に行きますし、お願いしてから選任するまで時間がかかるから、今日お返事をもらって進めてしまっていいですか?

(中略)

無料の弁護士に頼める制度があるなら、と思い、次回に会ってみることを承諾した。
警察が熱心に示談の斡旋をすることに不思議を感じないではなかったが、逮捕状について警視庁に聞きに行くためにも、ともかく弁護士は探さなければならない。
当時、それ以外のことにまで気が回らなかった。

(中略)

数日後、この時に取った調書の文章を確認するため、警視庁へまた行った。
確認作業には時間がかかった。
そこで一旦中断して、前回ここで紹介された弁護士のところへ出かけることになった。

(中略)

警察車両で弁護士事務所まで送られた。
自分一人で面会に行くものだと思っていたが、なぜか捜査員も数名、車に乗り込んだ。

(中略)

紹介された女性弁護士のところでは、また事件のことを聞かれた。
しかも、一から経緯を話している間、捜査員がずっと同席していた。
これでは「逮捕状がどうなったか聞いてもらえないか」などと頼めるはずもなく、捜査員には途中で断って席を外してもらった。

弁護士は、やはり示談専門の人らしかった。
捜査員がいなくなった後、私が警察の捜査に感じている疑問について少し話してみたが、あまり反応はなかった。

これ以上ここで警察への疑問や、逮捕状について話さないほうがいいと確信した。
警察車両で彼らの推薦する弁護士のところまで連れて行かれ、席を外してくださいとお願いするまでぴったりと捜査員が寄り添いながら示談の話を一緒に聞くなんて、ちょっとおかしい、という考えが浮かんだ。

2 中世の日本司法

ここはとてもショッキングなところだ。
被害者の詩織は明らかに監視下におかれている。
不起訴にするための示談を警察が勧め始めた。
「これはただのアドバイスですが、あなたが直接交渉しない方がいい。
弁護士を通して話をするべきです」。

弁護士にもいろいろいる。
優れた弁護士もいれば、依頼人よりも相手方あるいは示談にもっていきたい警察や裁判所のために動く弁護士もいる。

事件にもよるが、わたしなら警察が紹介する弁護士はまず断る。
敗北のレールに乗せられることはまず間違いないからだ。

数日後に、「警察車両で弁護士事務所まで送られた。
自分一人で面会に行くものだと思っていたが、なぜか捜査員も数名、車に乗り込んだ」。
まるで映画のようだ。
というか、よほど優れた脚本家でなければここまで想像できないだろう。
まさに事実は小説より奇なり、である。

しかも紹介された女性弁護士のところで話すときは、捜査員が同席していたというから、被害者が監視の対象になっていたわけだ。

詩織は、捜査員に席を外すように頼む。
ここは本来、弁護士がいうべき言葉だ。

詩織は、捜査員がいなくなった後に、警察の捜査に対する疑問を少し話してみるが、弁護士の反応はない。
そこで、「これ以上ここで警察への疑問や、逮捕状について話さないほうがいいと確信した」。
この判断は正しい。
とにかく日本の司法は中世にある。
弁護士だからと信じていたら、とんでもないことになる。

その後、伊藤詩織には、自分で選んだふたりの優れた女性弁護士がつくことになる。
ふたりの弁護士は口を揃えて、「逮捕直前に現場で突然ストップがかかったのは、絶対におかしい。他の弁護士や、警視庁に詳しい人に聞いても、皆そんな話は聞いたことがないと言っている」と語る。

2016年1月、K検事は山口氏の聴取を行った。

山口氏は、検事による聴取から4ヶ月ほど経った2016年5月30日、TBSを退社した。

ひと月後、安倍首相について書いた『総理』(幻冬舎)という本を上梓し、コメンテーターとして、盛んにテレビに登場するようになった。

こうしたことを私は、友人から聞いたのだが。

新しいアパートに、テレビは置かなかった。
極力、彼の顔を見ないで済むように。

彼が今後どのような人生をおくろうと、私に関係はなかった。
日本の法律がきちんと機能することを願うだけだ。

ここには興味あることが書かれている。
時系列に沿って書くと、

(1)2016年1月、K検事が山口の聴取をおこなう。

(2)検事による聴取から4ヶ月ほど経った2016年5月30日、山口はTBSを退社。

(3)ひと月後、安倍晋三へのヨイショ本『総理』(幻冬舎)を出版。
コメンテーターとして、テレビに登場し、森友学園事件に関して、安倍擁護の論陣を張る。

この流れを見ていくと、不起訴獲得のための運動ととれなくもない。
あまりに山口のテレビでの安倍擁護が臆面も無いので、先輩筋の「政府御用達田崎スシ楼」にちなんで「小僧寿司」とわたしはツイッターで揶揄していた。

いま考えると、かれなりに逮捕から逃れるために必死だったのだろう。

それにしても、なぜ急に山口がテレビに出まくったのかという疑問だ。
わたしは官邸からそのような指示がテレビ各局にあったのだと思っている。

・・・・・・・・・━━━━━━☆

※メルマガのご案内

こんにちは!

有料メルマガ『兵頭正俊の優しさ出前』を配信している兵頭と申します。

2011年10月1日より『兵頭正俊の優しさ出前』(月額:864円(税込)/配信サイト:まぐまぐ)を配信開始しました。

月・水・金・それに、ほぼ週に1回の号外を配信しております。
実質、週に4回の配信になります。

わたしの強みは、商業ジャーナリズム、「記者クラブ」メディアから自立していることから、政権にも企業にも遠慮なく真実を語る位置を確保していることです。

わたしは若い頃に吉本隆明の『試行』に作品を発表していました。
この『試行』自体が、そのような問題意識に貫かれた同人誌でした。
位置のとり方の大切さはわかっております。

また、教師をやっていたことから、わかりやすく表現することには通じており、多くの読者の方からわかりやすいという声を聞いています。

優れた情報と、新しい状況の分析・とらえ方を提供します。
そして、「記者クラブ」メディアの情報操作と国民洗脳を対象化し、あなたを現在とは違うステージに招待します。

確かに、わたしはテレビなど晴れがましい舞台には出ておりません。

しかし、わたしの書いた文章は、グーグルの検索でもあちこちで上位に出ております。

ツイッターでは3万を超えるフォロワーに支持されており、無料メルマガ『兵頭正俊の知らなきゃ滅ぶニュースの真相』は殿堂入りを果たしております。

価格以上の価値があると自信があります。
ぜひ購読のご検討をお願い申し上げる次第です。

なお、別に無料メルマガ『兵頭正俊の知らなきゃ滅ぶニュースの真相』PC用と、内容は同じ 携帯用 を2011年8月29日より、「まぐまぐ」から配信しております。

無料で、ほぼ週刊です。
(体調を崩したとき、それに正月や5月の連休、お盆には、お休みをいただきます)

携帯の送受信の制限を考慮して、分割して送信するように改善しました。

ご登録をよろしくお願いします。

なお、メルマガはテキストファイルであり、このブログ掲載の画像などはありません。

また、このブログ掲載の文章は、メルマガの一部であり、ブログ用に編集してあります。
© GIHYO