橋下徹は節操のない男である。あるときは、木を見てわざと森を見ない。あるときは、森を見てわざと木を見ない。使い分けの基準は、どちらが現下の自分に都合がいいかによる。

 

かれが、現在、最も追いつめられているのは、米軍に勧めた風俗業の活用と、従軍慰安婦に対する発言をめぐってである。

 

橋下徹は、言い方が消費税増税や原発問題と同じように、この問題についてもくるくると変わる。つまり現在の発言も将来どのように変わるか、わかったものではないのである。

 

これまでもだいぶ変わってきているが、今では、「僕がいま主張していることは本当は自民党が言わなきゃいけない。日本は慰安婦問題を受け止めなければいけないのに自民党では責任を否定する人たちがいる。世界各国が過去を直視し、女性の人権を尊重する世界をつくる。この主張のどこがおかしいのか」と、市議会委員会で述べるなど、自民党を矢面に差し出すことで、自分はいい子になろうとしている。

 

ところで、5月26日に、橋下徹が「私の認識と見解」を発表した。自分の発言から日本維新の会の党勢が急落したのを受けて、起死回生を狙ったものである。しかし、橋下のこの駄文では目的を達することは無理だろう。

 

橋下徹は、例えば5月13日には記者団に向かって次のように語っていた。

 

「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で、命をかけて走っていくときに、どこかで休息をさせてあげようと思ったら慰安婦制度は必要なのは誰だって分かる」

 

「慰安婦制度じゃなくても風俗業は必要だと思う。沖縄の普天間に行ったときに、司令官に「もっと風俗業を活用してほしい」と言った。性的なエネルギーを合法的に解消できる場所はある。真正面から活用してもらわないと、海兵隊の猛者の性的なエネルギーをきちんとコントロールできないじゃないですか」
(引用終わり)

 

これはどのような橋下信者が読もうとも、米兵士の性的なエネルギーに対して、合法的に解消できる場所として日本の風俗業を勧めていることは明確である。

 

ところが「私の認識と見解」では「私は、疑問の余地なく、女性の尊厳を大切にしています」と書いている。つまり、夏の参議院選挙に向けてのパフォーマンスが始まったのである。

 

ひとりの人間は過去の産物として現在を生きている。過去から完全に切断された現在などありえない。橋下徹も過去の延長上に現在を生きているのだが、そのどこにも社会的弱者に注ぐシンパシーや共生の優しさはないように思われる。

 

かれの掲げる政策は、対米隷属と、弱肉強食の新自由主義とからなっている。どこを見ても風俗業の女性にまともに向き合うような強い精神はない。

 

橋下は「私の認識と見解」のなかで書いている。

 

「性の対象として女性を利用する行為そのものが女性の尊厳を蹂躙する行為です。また、占領地や紛争地域における兵士による市民に対する強姦(ごうかん)が許されざる蛮行であることは言うまでもありません」
(引用終わり)

 

「性の対象として女性を利用する行為」を指弾しているのだが、これだけ読むと、まさかこの人物が、ほんの2週間ほど前に米軍司令官に対して、性欲の合法的なはけ口として日本の風俗業を勧めた人物だったとは思えない。その場で都合のいい発言を繰り返すものだから、論理的整合性など微塵もないのである。

 

また橋下は書いている。

 

「私は、未来に向けて、女性の人権を尊重する世界をめざしていきたい。しかし、未来を語るには、過去そして現在を直視しなければなりません。

 

日本を含む世界各国は、過去の戦地において自国兵士が行った女性に対する人権蹂躙行為を直視し、世界の諸国と諸国民が共に手を携え、二度と同じ過ちを繰り返さぬよう決意するとともに、今日の世界各地の紛争地域において危機に瀕(ひん)する女性の尊厳を守るために取り組み、未来に向けて女性の人権が尊重される世界を作っていくべきだと考えます」
(引用終わり)

 

馬鹿な理屈である。戦時における女性の人権蹂躙を批判する。そんな批判を繰り返しても何の意味もない。一度戦争が起きれば、女性はもちろんのこと、老人も、子供も、兵士たちも、すべて人権を蹂躙される。

 

戦争そのものが人権の抹殺を前提にし、敵の人命の抹殺を勝利とする論理のうえに成り立っているのだ。

 

橋下が本当に女性の人権をいうなら、戦争そのものに反対しなければならない。戦争に向かう現下の状況に反対しなければならないのだ。

 

石原慎太郎とコンビを組んで、橋下徹のやっていることは、戦争に向けて日本を核武装させることである。いっていることと、やっていることが、単純な頭のなかで肉離れを起こしているのだ。

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「このような状況において、私は強い危機感から、在日アメリカ軍司令官に対して、あらゆる対応策の一つとして、「日本で法律上認められている風俗営業」を利用するということも考えるべきではないかと発言しました」
(引用終わり)

 

橋下徹は、法律上認められている風俗業と、法律上認められていない風俗業等をわけている。そして法的に認められている風俗業の活用を、米軍司令官に勧めたわけである。

 

ところが、橋下徹は大阪府知事になる前に、大阪飛田新地の料理組合の顧問弁護士をしていた。この飛田新地は、大阪の人なら誰もが知っている昔の遊郭である。IWJの調べによると、「どの店でも一律で15分1万2000円で「本番あり」の性的サービスが提供されています。「本番」とは売春防止法で違法とされている「性器接合」=「性交」であり、即ち「違法な売春」である」。

 

橋下徹は、女性の人権を蹂躙している大阪飛田新地の料理組合の、顧問弁護士をしていた過去をどう説明するのか。ほんとうは「私の認識と見解」で語っている女性の人権擁護など、かれには語る資格さえないのではないか。橋下徹はこの深刻な問題に答えなければならない。

 

さらに橋下徹は、沖縄女性の人権蹂躙を心配する前に、足元の飛田新地の違法な売春行為、女性への人権蹂躙に取り組むべきなのだ。

 

そこは放置して、沖縄女性の人権蹂躙をいえば、選挙目当てのパフォーマンスにはなるかもしれないが、大阪飛田新地の女性は泣くのである。

 

この大阪飛田新地を、『さいごの色街 飛田』に描いた井上理津子が、『毎日新聞』のインタビューに答えて、こう述べている。

 

「私は大阪の遊郭・飛田新地で働く女性約20人に話を聞きましたが、「自由意思」で入った女性など一人もいなかった。

 

貧困だったり、まっとうな教育を受けられなかったりして、他に選択肢がないため、入らざるを得なかった女性が大半でした」「慰安婦になる以外に選択肢がなかった女性にとっては強制以外の何物でもないんです。

 

『軍の維持のために必要だった』という(注:橋下徹の)発言に至っては、戦争を容認している証し。正体見たりです」「苦しい事情を背負った女性の境遇、慰安婦に送り出さざるを得なかった家族の思い、社会的背景に心を致しているとは思えない。政治家の役割を果たしていると言えない」(5月16日夕刊)
(引用終わり)

 

飛田新地で働く女性の現在は、橋下徹の出自と同じマイノリティである。もしかすると出自を同じくする人もいるかもしれない。

 

現在の橋下徹はマイノリティの立場に立たない。1%のアンシャン・レジームに成り上がろうとする姿勢ばかりが際立つ。

 

少なくとも少年時代の橋下は違っていた筈だ。どうして飛田新地で働く、救われるべき女性の側に立たないのだろう。

 

かれがほんとうに出自の意味を、強い人間として理解したとき、現在の日本維新の会の冷酷な政策は粉々に砕け散る筈である。

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