(これまでは政治を中心とした状況への発言をしてきました。メルマガはこれまで通りですが、当サイトでは、社会、教育、メディア、ITと、これから幅を広げて発信します。

これまで通りの政治状況への発言が4、それ以外が3の割合になると思います。

最初は、風化しつつある阪神・淡路大震災について個人的な体験を発信します。

ご期待ください)

 阪神・淡路大震災の風化に抗して

地へのレクイエム

冬だった。

鈴なりの電車が、阪神淡路大震災の後に修復されたばかりの鉄道を、徐行運転しながら三宮に向かう。

さっきから電車内で、おう、という驚きの声があがりつづけていた。

誰もが車窓から身を乗り出すようにして外の光景に釘付けになっていた。6歳の娘もまた朝霧で電車に乗ってから、窓の外に目を食い入るようにやったままである。須磨、鷹取、長田。窓外にまるで空襲を受けように焼けただれた黒い炭の街が広がっていた。

死の街を行きながら、自分が異様な不安感に領されるのは、光景が黒の斜線ばかりでなりたっているためだ、とわかった。

どのビル、どの家、どの電柱も傾いている。まるで垂直な線がないのだ。水平な線もない。

立ち直ることがあるのだろうか、と思われる死の街をよぎりながら、地震の恐ろしさが込み上げてき、恐ろしい、とわたしは何度も胸内で呟いた。

一般の民家はどれも地上1メートルほどの高さで、辛うじて焼けただれた廃材で痕跡を留めている。あたり一面、焦土と化し、その焼け跡に、廃材を拾ってきて建てたのが、まるで表札か看板がわりのように立っている。

わたしは太平洋戦争で焦土と化した神戸の写真を見たことがあるが、それよりもっと凄まじい光景が現出していた。なぜなら、まるで神の手でサイコロを転がしたように、家屋やビルが転がっていたからだ。そういう光景は先の空襲ではなかった。

緑がどこにもなかった。

黒の残骸。黒の道路。

電柱とちがって、根を地中に張っているぶんだけ、街路樹の傾きは少なかったが、どれも燃えて黒い炭と化している。高層ビルはほとんど無残に倒壊し、そうでないビルも焼けただれて傾き、まるで空に突き出た巨大な黒の位牌になっている。

ビルも家も街路樹も、どれひとつとして消火することが出来なかった。いや、消火ということばも含めて、一瞬にして神戸は消えたのだ。

電車のレールのきしみが、恐ろしく、悲しい、レクイエムのようだった。

何へのレクイエムか。神戸へのレクイエムか。

そうじゃない、とわたしは思った。

これは傷ついた地へのレクイエムだ。

知人の安否を求めて兵庫駅で降りる。6歳の娘を外で待たせて、警戒しいしい傾いたビルに入る。尋ねた知人は、いなかった。メモをドアに差し入れて、廃墟の街を歩き始める。

焼けただれたあちこちの家屋の前に、野ざらしの仏壇が作られている。そして粗末な供物が供えられている。

スナック菓子などの、その簡単な供物が余計悲しみを強めている。

立ち止まって茫然としていると、向こうのほうから、白髪を振り乱し、着物の前をだらしなく開けた老人が、わたしに向かって、「…ちゃん、久しぶりやんか。寄っていって」

すると、娘さんらしい女性があわてて走ってきて老人の腕を掴むと、黒い廃材の向こう側に消えた。

「もう帰ろうよ」と娘がわたしの腕を引っ張った。「おうちに帰りたい」

<完>

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