世界の変化を捉えるのに、米国、ロシア、中国の、その外交と軍事政策の変化を見る。これがもっとも直截なとらえ方である。

もうひとつその周辺国の変化を見るという方法がある。これも非常に重要である。

今回のメルマガでは、英国の動きを通じて世界(米国)の変化を、さらには変化しない異様な日本にも触れてみる。

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『英国エコノミスト』(2016年9月10日)に「それで、英国のEU離脱は、本当はどういうことなのか?」が載っている。

「(日本の外務省が英国EU離脱についての論文を、異例にも発表したが)この論文では、日本の企業は昨年に行ったEUへの投資の約半分を獲得した英国の巨大な雇用者であると、している。英国が欧州への入り口であるから、その投資の多くはなされたのであると。

論文は、<単一市場への完全なアクセスを維持し、輸出に際しての税関の管理を排除し、ロンドンを拠点とする銀行が欧州全体で商取引を可能にする「パスポート」を保持し、雇用者が自由にEU国籍者を雇用できるよう努力すること>などをメイ女史(英国テリーザ・メイ首相 注 : 兵頭)に助言した。

これらの介入は、保守党のEU離脱派たちを、<6月に素晴らしい勝利を獲得したのに、闘いには負けかねない>と心配させる。<選択肢があれば、メイ女史とハモンド氏は、移民や金、法などの完全な管理を取り戻すことより、単一市場に留まるほうに頼るだろう>と、彼らは懸念する。

デーヴィス氏は今週、単一市場にアクセスを持つということはその会員であるということと同じではないと述べ、会員権を保持するために、国境管理を放棄することは「ありえない」所産であるとも付け加えた。しかし、メイ女史のスポークスマンに<その見解はデーヴィッド氏の個人的な意見である>と黙らされてしまった。彼はまた、とりわけ安全保障や外交政策の協力などの分野では、できる限り現状を維持するとも語った」

英字原文

日本は英国のEU離脱に反対している。ということは米国もまた反対している。

外務省がわざわざ英国EU離脱についての論文を発表した。そこで、日本の企業が、昨年のEU投資の約半分を獲得したのは英国の雇用者であったとした。それも、日本は英国がEUに入っているからこそ投資したと述べた。

つまり日本企業の損得勘定から、EUに留まるべきことをメイに進言したのである。恥ずかしくなるほど哲学がない。端的にいうと、損させないでくれ、と企業に代わって政府が頼んでいるのだ。

『英国エコノミスト』は、「選択肢があれば、メイ女史とハモンド氏は、移民や金、法などの完全な管理を取り戻すことより、単一市場に留まるほうに頼るだろう」と、離脱派は懸念するというが、これは殆どリップサービスだろう。

英国の判断の中心にあるのは、対英投資をやってきた日本などの利害などではない。「安全保障や外交政策の協力などの分野」で、「できる限り現状を維持する」が、生き残るために英国は変わりますよ、日本はどうぞ米国と心中してください、ということだろう。

『英国エコノミスト』は指摘しないが、メイの判断の中心にあるのは、国際政治のふたつの潮流のせめぎ合いだろう。それは凋落する米日と、勃興する中露とのせめぎ合いである。世界は、そして英国も明らかに後者になびいている。

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英国のEU離脱は、米からの自立を意味する。さらに、英国のEU離脱は、英国の掣肘を離れてEU自体も米国から自立することを意味する。EUの場合は、軍事的にも米国(NATO)からの自立を呼び込む。具体的にいうと、NATOから自立したEU自体の軍事的統合を呼び込む。

トルコのエルドアンは、EUに難民を送り込み、英国のEU離脱を引き出し、自らもEUを見限った。そしてNATOを弱体化すると、ロシア・中国への土産とした。結果的には、このトルコと同じことを英国はやりつつある。

ロシアがこの英国のEU離脱を歓迎しない筈がない。なぜなら英国は、世界でもっともロシア(旧ソ連)に敵対し、ロシアに禍をもたらしてきた国だからだ。

冷戦といえば、わたしたちは米ソの対立と考えがちである。それはあながち間違いではない。しかし、米国をオフショアバランシング戦略で、そのように巻き込んでいき、背後で指南したのは英国なのである。

したがって英国のロシア接近は非常に重大な出来事なのである。

現実的に英露接近が固められていくと、凋落する米国の運命はほぼ決まったといっていいかもしれない。

このように英国のEU離脱の背後で、隠れた主役ロシアの陰が日増しに強まっているのである。

「英国と欧州連合 それで、英国のEU離脱は、本当はどういうことなのか?」は、続けてこう書いている。

「単一市場に留まる場合は簡単だ――これはEU離脱のダメージを最小限にするだろうと経済学者は言う。「強硬な」EU離脱とは、EUや第三国との包括的な自由貿易協定がないままで単一市場から離脱する場合で、投資や生産の大幅な落ち込みを意味する。

離脱派は、多くの国は自由貿易協定を必要とし、経済は残留派の予測より好景気になると判明していると主張する。離脱派リーダーの一人、元司法大臣のマイケル・コーブは、経済の破滅を予言する自称専門家は「面目を失っている」と冷笑した。

とはいえ、メイ女史は「平易な航海」ではないであろうと認め、あまり楽観視はしていない。国内業界や財界の圧力団体は、単一市場に残るよう圧力をかけている。貿易協定については、G20サミットでオーストラリアの首相、マルコム・ターンブルから暖かい言葉を獲得したが、バラク・オバマや他の者たちから、英国との二国間協定は優先事項ではないだろう、ときつく言われた。今日、自由貿易協定の風潮は絶好というわけではなく、フォックス氏の部門は経験豊富な貿易交渉者を失っている。

メイ女史は、早期の選挙や2回目の国民投票は認めていない。彼女は離脱計画について、随時の口頭説明をすることを拒んでいる。また、彼女は、議会の投票なしに50条を行使出来ると主張する。しかし、その行使により、EUリーダーたちの満場一致でのみ延長が可能な離脱の2年間の期限が設定されることで、彼女は少々遅延させる事を強く求められている。

シンクタンクのOpen Europeに向けた思慮に富んだ論文で、財務委員会の委員長のアンドリュー・ティリーは<政府はまず初めにどのような離脱を望むのかを決めるべきであり、引き金を引く前の方がその影響力は大きい>と言う。来春のフランスの選挙、または9月のドイツの選挙までも待ってもいいと、彼は助言する。

とはいえ、メイ女史が待つことは自身の党から許されないであろう、ましてや2019年半ばの欧州の選挙前に英国EU離脱を片付けたいとする熱心なEUのリーダー仲間からは許されないことは言うまでもない。いかさま戦争はこれから熱くなるだろう」

外国企業を中心に大陸への移動が進み、英国経済への影響が強まっている。それで、「国内業界や財界の圧力団体は、単一市場に残るよう圧力をかけている」。

ポイントは、「メイ女史は、早期の選挙や2回目の国民投票は認めていない」ということだ。2回目の投票をやれば残留派が勝利する可能性は高い。メイが明確に2回目の投票を否定したことは、内心ではすでに離脱を固めていることを物語る。

しかし、英国のEU離脱はそう簡単ではない。EUが、表向きは英国のEU離脱を止めているのもその理由である。

『Sputnik日本』(2016年9月16日)は「英紙:EUは英政府にEU離脱を放棄させることを望んでいる」として、次のように報じている。

EUの指導者たちは、交渉が厳しいものとなれば、英国はEUからの離脱を放棄する可能性があると見ている。英国の新聞Daily Telegraphが報じた。

EU高官の中には「悪夢のような官僚主義の現実」に直面した場合、英国が最後までEU離脱を貫けるのかどうか、疑いの念を表している人もいる。 一方、英国政府スポークスマンは、新聞取材に対し、EUのエリート達は「このゲームが我々の考えを変えさせるに違いないと思っているようだ」と伝えた。

新聞はまた、次のように指摘している-「フランスの金融アナリスト、ミシェル・バルニエ氏とベルギーのヒー・フェルホフスタット元首相が、英国のEU離脱問題を担当する交渉相手に選ばれたが、 EUのヘルマン・ファン・ロンパウ前大統領は、この人選について『大変大変厳しいものだ』とし、英国にとって交渉はひどく困難なものになるに違いないと警告した」(「英紙:EUは英政府にEU離脱を放棄させることを望んでいる」)

ただ、いかに英国のEU離脱が困難であっても、英国を離脱に向かわせる国際情勢の変化がある。それが米国の凋落と、中露の勃興である。

英国としては、EU離脱で失うものと、得るものとを天秤にかけて、EU離脱のメリットにかけたようである。

それは米国との別れと、中露との仕切り直しである。こういうのを政治といい、外交というのである。

われらの安倍晋三は、現在、米国にいる。ヒラリーから選挙民向けのTPP反対を引き出し、茶坊主に励んでいる。

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