今日のメルマガは、「投票」を切り口に、日本と英国の「投票」を採り上げる。

日本の「投票」とは、今回の参議院選挙であり、英国の「投票」とは、先の英国のEU離脱を決めた国民投票のことである。

この2国の「投票」には共通点がある。ともに衰退の国で起きた、より衰退を加速する「投票」であったという共通点だ。

『朝日新聞デジタル』が「参院選「野党に魅力なし」が71%」という記事を載せている。

「参院選の結果を受けて、朝日新聞社は11、12日、全国世論調査(電話)を実施した。自民、公明の与党の議席が改選121議席の過半数を大きく上回った理由を尋ねると、「安倍首相の政策が評価されたから」は15%で、「野党に魅力がなかったから」が71%に及んだ」(「参院選「野党に魅力なし」が71%」)

与党の議席が改選121議席の過半数を大きく上回った理由が、安倍晋三の政策が評価されたわけではなかった。

「野党に魅力がなかったから」が71%に及んだ、というのは、それだけメディアが選挙の大切なポイントを国民に伝えなかったことを物語っている。

71%が「野党に魅力がなかったから」としているが、これこそはメディアの自己正当化である。御用メディアの陰謀を野党の魅力のなさにすり替えている。

今回の参議院選挙の最大敗因は、改選45議席を、共産党に助けてもらいながら32議席に減らした民進党にある。これが野党の顔なのだからどうしようもない。しかも代表のフランケン岡田こと岡田克也に、最初から責任をとる気などなく、勝てそうな地元の三重で民進党候補がもし負けたら代表選に立候補しない、といったせこい根性でポストにしがみつくのだから、魅力以前の話である。

負けても「3年前はどん底だったのに比べれば、回復の途中にある」と嬉しそうな岡田。大切なのはあくまでも党内事情なのだ。こんなちっちゃな政治家が改憲を阻止する野党の顔なのだから、勝てる筈がない。

三重で勝ったので、これで3分の2をとられた責任からも逃れ、代表を続けるつもりである。すぐにどや顔で昼寝を始めるだろう。

自己犠牲的に譲歩を重ねる共産党の志位和夫と、党勢回復といった卑小な問題意識で対応した岡田克也との違いは、改憲が成された場合の状況認識の違いであった。もともと改憲論者の岡田克也には、身を切る危機意識などなかったし、今もないのである。

岡田克也は、2004年7月に、訪米先のワシントンで講演し、「憲法を改正し国連安保理決議のもとに、日本の海外における武力行使を可能にする」と明確に発言している。したがって、どうしても改憲阻止の姿勢が弱いのだ。

今回の選挙協力は、いかにも民進党らしい中途半端なものだった。複数区での選挙協力ができていなかったのである。

大阪選挙区を見てみよう。改憲勢力おおさか維新の会の高木佳保里が66万9719票で当選している。ところが次点の共産党の渡部結は45万4502票で、民進党の尾立源幸が34万7753票。選挙協力が実現していたら、おおさか維新の会の高木佳保里を遙かに上回り、野党統一候補がとっていた。

兵庫選挙区では、改憲勢力おおさか維新の会の片山大介が53万1165票。民進党の水岡俊一が42万0068票で、共産党の金田峰生が22万8811票。ここも選挙協力さえできていたら、おおさか維新の会の片山大介に楽勝していたことになる。

改憲を阻止する国政選挙でさえ真摯な選挙協力ができない。民進党が本気になっていないのだ。もちろん民進党にも優れた政治家はいるのだが、野田佳彦ら旧民主党壊滅のA級戦犯たちが実権を握っている。

A級戦犯たちのミッションは、あくまでも民進党内に留まり、民進党を自民党二軍として支配することである。換言すれば、米国・官僚・財界に尽くす二大政党制を作るのがかれらのミッションだと思われる。

次の衆議院選挙に向けて、真摯な総括が望まれる。

ここで、もうひとつの投票を見てみよう。『エコノミスト』(2016年7月2日号)に「そして後ろのドアを閉めなさい」が載っている。

EU withdrawal (9)

「ブリュッセルの誰もがイギリス人の痛みを感じている。しかし同情は長続きしないだろう

(中略)

英国市民は今、海外で同情の対象であり、英国政府は軽蔑の的になった。ある当局者<特にフランスとイタリアの>からのコメントに対しては、強い精神力の気配がみられる。彼らは、<我々はあなたの痛みは感じる、しかし、出て行くなら、ぐずぐずしないで>と言う。

そのような感情は、タカ派の欧州連合当局者のスピーチに紛れ込んでいる。欧州委員会の委員長であるジャン=クロード・ユンケルは、英国の旅立つ首相であるデービッドキャメロンを<長年の欧州統合懐疑主義の果実を収穫するもの>と非難したが、彼の言葉はたちまち欧州中の聴衆に響いた。

恐らく、その結果、ブリュッセルで英国の影響が色あせるのに長くはかからなかったことも驚くに当たらない。英国のコミッショナーであるジョナサン・ヒルは、国民投票の結果が出た翌日に辞任した。キャメロン氏は後任を任命するというが、ヒル氏の金融サービスの職は既に入れ替えられていた――彼の後任は、恐らく臨時の職務として紙クリップの配布の管理を楽しみにしているのでは。

欧州議会議員たちは、<英語はもはや欧州ビジネスの共通語ではない>と警告する。欧州連合の機関で働く何千人もの英国人は、彼らの先行きに不安を感じている――離脱以降も滞在が許されるとしても、昇進など期待できないであろう。

(中略)

近年、英国のブリュッセルにおける影響は本当に小さくなった。一部にはユーロと難民危機が理由だが、どちらも英国には直接影響はないが、それらは他の人達の政治的エネルギーを大量に消費した。又、ジャン=クロード・ユンケル氏の任命を巡った不適切な闘いや、全般的な外交的離脱などのキャメロン氏の間違った決定の結果でもある。

上級ランクの委員会や、欧州連合の中心機関で着実に進行する英国人の衰退の結果、英国の影響の及ぶ範囲化が縮小したが、英国の欧州連合離脱はその低下傾向を加速するだろう。

しかし、カメラを少し引いて見ると、異なった映像が現れる。欧州連合はフランスとドイツを結びつけるために結成されたのだろうが、後の数十年間の欧州連合は、少なくとも、多くは英国の価値、アイデア、活力で形成されてきた。東方への野心的な拡張、統合された単一市場の安定的な創成、国際的な貿易へ焦点を合わせること――これら、何百万人の生活を改善した欧州連合のプロジェクトは、全て英国で作られたのだ。とはいえ、国民投票時には、残留陣営はこのことを十分提示しなかったが、恐らくそれはブリュッセルを集中的に宣伝しては投票に勝てないと思ったからではないか。

今週のブリュッセルでのサミット会議では、欧州連合のリーダー達は直ちに共通の線で合意に達した――欧州離脱は英国の問題のはずで、欧州の問題ではない。影響をこうむるのは英国経済であり、弱体化するのは英国の通貨であり、英国の政治は混乱してしまった。(身の毛のよだつ光景は、他国の欧州統合懐疑派を思いとどまらせる効果があるだろう。)

ある欧州人は夢を再び見始めてさえいる。イタリアの首相であるマッテオ・レンツィは今週、議会で<欧州離脱は悩める欧州連合をリセットするチャンスだ>と話した。英国人が鉄道線路をブロックしなかったら、欧州の列車はあるべき起動に戻ることができるのに。

たぶん。しかし話には別の面がある。英国を排除した欧州は、国家統制経済的な方向に間違いなく向かうであろう、とエストニアの大統領であるトーマス・ヘンドリク・イルヴェスは警告する。貿易、単一市場、エネルギーへの野望など――正確には低成長の欧州が焦点をあてる各種プログラム――が最大のチャンピオンなしには縮小するであろう。

又、英国の助言を伝統的に頼りにしてきた北部のリベラルな小国群は、南部各国の保護主義的な本能にさらされることに気づくであろう。さらに、この43歳の2つのパートナー間のもつれを解くという異常なほど複雑な仕事に注がれる、時間、資源、エネルギーが加わる事になるので、英国の欧州離脱は誰にも良いことはないのは明確だ」

「英国市民は今、海外で同情の対象であり、英国政府は軽蔑の的になった」と『エコノミスト』は書くが、すでに世界中で、英国への同情は限りなくゼロなのだろう。

「我々はあなたの痛みは感じる、しかし、出て行くなら、ぐずぐずしないで」。自分たちの投票で決めたのだから、こういわれても仕方がないだろう。

<英語はもはや欧州ビジネスの共通語ではない>と欧州議会議員たちが語るとき、欧州での、そして世界での英国の相対的な位置の低下を示している。

「数十年間の欧州連合は、少なくとも、多くは英国の価値、アイデア、活力で形成されてきた。東方への野心的な拡張、統合された単一市場の安定的な創成、国際的な貿易へ焦点を合わせること――これら、何百万人の生活を改善した欧州連合のプロジェクトは、全て英国で作られたのだ」。だから独仏を中心にEUは英国に対して冷ややかなのだ。

『エコノミスト』は気付いていないが、「東方への野心的な拡張」こそが、英国による、伝統的なオフショアバランシングであり、欧州大陸の分裂と破壊の策動であった。

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