政治による防衛戦略が重要

日本の安全保障問題を考えるとき、切り離せないのは米国の戦略である。

米国は日本の安全保障をどう考えているのか。

その戦略を知らなくては、いったいいままで何のために駐留米軍に巨額の費用を払ってきたのかということになる。

そこで今回は、エリック・ヘジンボサムとリチャード・サミュエルズの共同執筆である「日本の新しい防衛戦略―― 前方防衛から「積極的拒否戦略」へのシフトを」を切り口にして考えてみる。

(エリック・ヘジンボサムは、マサチューセッツ工科大学国際研究センター 首席リサーチサイエンティスト

リチャード・サミュエルズは、マサチューセッツ工科大学教授(政治学))

<積極的拒否戦略を>

日本はますます困難な安全保障環境に直面している。実態のある脅威とはいえ、一面的なものにすぎない北朝鮮の核問題にメディアは関心を寄せているが、日本の戦略家たちは、中国の台頭そして東シナ海における北京の領土的野心が作り出す、より広範で多面的な脅威を憂慮している。

安倍晋三首相は、安全保障問題に前任者たちよりも積極的な姿勢をみせている。防衛力の強化に動き、安全保障の意思決定プロセスを再編し、長期的に下降線を辿ってきた防衛費を増額した。自衛隊に課せられた制約の一部を緩和し、(無人偵察機などの新たな装備の導入を通じて)情報収集能力も強化した。しかし、こうした措置も、(北東アジアにおける)パワーバランスの変化を周辺部分で緩和するにすぎない。

日本の現在のアプローチは、(前方で侵略を阻止することで、後方におけるダメージを阻止することを目的とする)前方防衛戦略とみなせる。日本の(尖閣諸島を含む)前方に対する敵対勢力の侵略を可能な限り迅速に押し返し、打倒することを重視し、この戦略を遂行するための重要な戦闘を戦う伝統的な機動戦力を編成している。

ポスト冷戦初期の安全保障環境なら、前方防衛戦略にも完全な合理性があったが、中国が紛争の初期段階でかなりの優位を手にできる(現在のような)変化した環境にはうまく機能しないだろう。脆弱性を抑え、アメリカとの同盟関係のポテンシャルを最大限に生かし、中国に対する抑止力を強化するには、日本はむしろ「積極的拒否戦略(strategy of active denial)」へシフトしていくべきだろう。これは、紛争が始まった段階の急変する戦況での戦闘に集中するのではなく、敵の攻撃を耐え抜き、相手を悩ませ、抵抗することで、短期間で決定的な勝利を相手に与えず、攻撃のリスクとコストを高めるような戦力を前提とする戦略だ。(『Foreign Affairs Report』2018 NO.9)

まず、この論文には致命的な瑕疵がある。それは次の2点である。

1 かりに中国敵視論の存在理由があるにしても、それを自明で不可避の前提として捉えたら、政治の役割がなくなってしまう。そこに対しては非常に欺瞞的だ。

北朝鮮の脅威とやらが終わったら、今度はまたぞろ中国脅威論が復活してきた。米日の支配層は、つねに敵を作り、それで米軍産学・イスラエル複合体を食べさせていかねばならないのである。

戦争を起こさないために、政治は汗をかくべきだ。それについては一言も述べられていない。前提として、避けられぬ日中戦争がある。そのために膨大な軍備予算をとられることになろう。

原発の廃炉費用と中国敵視の軍備費用。これが延々と続く。増税に次ぐ増税が日本国民を待ち受けている。だからわたしは若者に日本脱出を呼びかけているのだ。この国の政治家はほんとうにダメだ。米国にノーといってはならない。それが身に染みついている。

2 この論文の2点目の瑕疵は、尖閣で日中の軍事衝突が起きた場合、米国は参戦しないことを明言していないことだ。

米国が参戦しない理由は次の3点だ。

(1)米国は、日本の尖閣への実効支配は認めている。しかし領有権は認めていないのである。つまり、日中が開戦したときに、米国は日中のいずれかを支援する特定の立場をとらないですむようになっている。

(2)米国の参戦権は議会が決める。安保保条約第5条は次のように明確に定めている。

第五条:各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

開戦の条件として「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処する」と明確に規定している。つまり、米国の戦争宣言は議会に諮られる。米国が日中戦争で日本に荷担して中国と戦端を開くかどうかは、議会が決めるのである。領有権を認めていない無人島のために、米国議会が参戦を認め、米国の若者の血を流すなどということはありえないのだ。

(3)米国の不参戦は「日米安全保障協議委員会(「2+2」)の開催」(平成17年10月29日)で、「島嶼部への侵略」に米軍出動のないことが、明確に規定されている。

「日米同盟:未来のための変革と再編」に、「II. 役割・任務・能力」がある。そのなかの「2.役割・任務・能力の基本的考え方」で、次のように定めている。

日本は、弾道ミサイル攻撃やゲリラ・特殊部隊による攻撃、島嶼部への侵略といった、新たな脅威や多様な事態への対処を含めて、日本を防衛し、周辺事態に対応する。

つまりわが国の「島嶼部への侵略」(尖閣諸島)に対しては、日本が自衛隊で対処するとなっているのだ。

もしここで中国が尖閣に上陸して島を制すると、島の管轄支配も消えて、実効支配は中国に移る。自動的に尖閣は安保条約の対象外になるのである。

この論文で興味あるのは、「最大のリスク」として、「尖閣諸島や琉球諸島南部で日本が迅速な反撃策をとれば、壊滅的な敗北を喫し、政府が中国との戦闘を続ける意思と能力を失う恐れがあることだ」と述べている点だ。それでどうすればいいかというと、「紛争初期段階の急変する戦況での戦闘に集中するのではなく、最初の攻撃を生き残り、敵の部隊を悩ませ、抵抗することで、最終的に敵の軍事攻撃のリスクとコストを高めるような「積極的拒否戦略」をとるべき」という。「ポイントはこの戦略で抑止力を高めること」という。その手段はひとつしかない。米国兵器を米国の言い値で「爆買い」することだ。

結局、米国の本音というのは、そういうことかもしれない。日中戦争で米国は特需景気で大いに沸くだろう。

「「積極的拒否戦略(strategy of active denial)」へシフトしていくべきだろう。これは、紛争が始まった段階の急変する戦況での戦闘に集中するのではなく、敵の攻撃を耐え抜き、相手を悩ませ、抵抗することで、短期間で決定的な勝利を相手に与えず、攻撃のリスクとコストを高めるような戦力を前提とする戦略だ」。尖閣諸島どころか、日本本土への攻撃に対しても、米国が駆けつけて中国を撃退するとはどこにも書いていない。

わたしたちはもう日米同盟の妄想など捨てるべきなのだ。中国が攻撃のリスクとコストを高めるときには、日本もまたリスクとコストを高めているのだ。長引けば長引くほ米国は特需景気で潤う。

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