政治闘争あるいは社会運動のなかでは、つねに二種類の考え方が出てくる。

ひとつは現実派の考え方である。この派は、現実的な利害と妥協点をつねに模索し、折れ合おうとする。実利的な獲得・成果に目標がおかれる。ある意味で常識的な人々であり、多数派を形成するのはつねにこの人々である。

もうひとつの派は、現象の裏に隠れているものを引き出し、闘争や運動に理念を問いかける。多数派の実利に深化を強いる。たいていは少数派で、多数派の現実主義に負けるが、真の意味で歴史や文化を前に進めるのはこの人たちである。

今日のメルマガでは、フランスの「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)」運動を、この後者の視点から捉え直してみる。

アンドレ・ヴルチェクが「もしフランスの黄色いベストが勝利したら何が起きるだろう?」(『マスコミに載らない海外記事』2018年12月20日)を書いている。かれは、これまで登場した多くの「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)」運動論より、遙かに深い、根源的な問いかけをしている。

フランスのエリートは残忍で、利己的で、しかも変態的だ。アメリカ大統領全員が、もっぱら破壊的な軍事コングロマリットを含め、巨大企業に奉仕しているように)、現在のフランス政府も、もっぱら彼らに奉仕している。「彼らは去るべきだ」、彼らは姿を消し、論理的な人間進化のパターンに譲歩するべきなのだ。社会主義、平等主義の社会。


だが連中は去る準備ができていない。逆だ。連中は何世紀も、地球中を略奪しており、今連中は、連中自身の(これまで強奪品を分け合うのに慣れていた)国民を略奪するまでに至ったのだ。


フランス国民は略奪されるのに慣れていない。何世紀もの間、彼らは良い生活をしてきて、過去数十年の間は、彼らは「極めて良い」暮らしをしていた。彼らは世界中のどこより、最も惜しみない恩恵を享受していた。


(中略)

もし抗議行動参加者の要求が満たされれば、請求書に対して支払いをするよう強いられるだろう他の誰かがいるはずだ。可能性として高いのは、何千万人も、あるいは何億人もが「重荷を課される」だろう。彼らはフランス、あるいは欧州連合に暮らしてはいないだろうし、あるいはどこか近辺でさえないだろう。

黄色いベスト運動の抗議行動参加者はこれについて考えているだろうか? 彼らにとって、それはほんの少しでも重要だろうか?

それは過去にも、考えてはいなかった。ジャン・ポール・サルトルのようなわずかな人々がまだ生きていた頃は、これらの疑問は定期的に問われていた。しかし最近はそうではない。今はそうではない。シャンゼリゼでの、この反乱の間も」(「もしフランスの黄色いベストが勝利したら何が起きるだろう?」

アンドレ・ヴルチェクの問いかけは本質的だ。「現在のフランス政府も、もっぱら彼ら(巨大企業 注 : 兵頭)に奉仕している。「彼らは去るべきだ」、彼らは姿を消し、論理的な人間進化のパターンに譲歩するべきなのだ。社会主義、平等主義の社会」。これは日本とて同じだ。平等で格差のない社会。その実現のためにはグローバル大企業には日本から去ってもらうのが一番だ。かれらにいてもらっても日本労働者の賃金は増えない。かれらは内部留保に努めるだけだ。国民からの収奪である。その収奪に政府が加担している。それに気付いたからフランスの国民は立ち上がった。しかし、日本国民は立ち上がらない。その厳しい現実すら知らない。徹底した愚民化策で、メディアが知らせないからだ。

 

フランス国民はこれまで何世紀にもわたって豊かな生活をしてきた。アンドレ・ヴルチェクはそこから本質的な問いかけをする。誰がその対価を払ったのだろうと。

フランスの豊かな生活は、旧フランス植民地、アジアのフランス領インドシナ、ベトナム、ラオス、カンボジア、シリア、レバノン、フランス領北アフリカのアルジェリア、チュニジア、モロッコ、フランス領東アフリカのジブチ、マダガスカル、モーリシャス。

そしてまだある。フランスの海外県マヨット&レユニオン、フランス領インド洋無人島群、コモロ連合、フランス領西アフリカのモーリタニア、セネガル、マリ、ギニア、コートジボワール、ニジェール……、もうきりがないから挙げるのをやめるが、この膨大な植民地収奪のうえに、フランス国民の豊かな生活は成立していた。

ここからアンドレ・ヴルチェクはさらに踏み込む。現在の「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)」運動も、もし彼らのすべての要求が満たされたら、結局、以前と同じ他の発展途上国、弱小国の犠牲のうえに、それは実現するのだと。

「黄色いベスト運動の抗議行動参加者はこれについて考えているだろうか? 彼らにとって、それはほんの少しでも重要だろうか?」。もちろん、誰も考えてはいない。運動の指導者たちにあるのは、より十分にマクロンから譲歩を引き出し、自分たちの生活を高めることだけだ。

もちろん現実論者たちは、闘争や運動のなかで、そんなことを考える必要はない、というだろう。そんなことを考えていたら、何もできないと。確かにその意見は一面正しい。しかし、この本質的な問いかけがあるのと、まったくないのとでは、闘争や運動の深化と広がりがまったく異なってくる。

要は、闘争あるいは運動が、革命の高みにまでたどり着けるか否かの問題なのだ。

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