世界では、「パナマ文書」の激震が続いている。アイスランド首相、スペインの産業相も辞任に追い込まれた。イギリスのキャメロンも窮地に陥っている。

そのなかで「パナマ文書」リーク(米国の政治家・要人の名前がひとりもない)でターゲットにされたプーチンのロシアは、その政治的意図を見抜いて、まったく異なった角度からの対応をとっている。

日本政府が世界とは異質な、調査しないといった対応をとるのは、自民党が米国・官僚・財界の利権代表であるためである。

タックス・ヘイブンのケイマン諸島に対して、日本の富裕層400人がため込んだ脱税総額は、2015年12月末時点で63兆円にも及ぶ。

タックス・ヘイブン脱税額に、法人税をかけると、約15兆円の税収になる。消費税率1%で税収2兆円とすると、ケイマン諸島分だけで7~8%になる。もちろんタックス・ヘイブンは世界中にあり、日本の1%が利用しているのは米国が主であろうから、すべてを合計すると、消費税増税など必要なかったのである。

若者を奨学金返済で追い込むこともなく、すべての奨学金を給付に変えるなど簡単にできた。また、待機児童の問題もクリアできたのである。年金も生活保護もさらに増額できる。国民は精神的物理的に豊かな老後が送れたであろう。

安倍晋三は、日本の99%に対しては「マイナンバー」制度で課税強化に努める。しかし、脱税の1%に対しては、調査すらしない。年金の「受給開始年齢」の再引き上げもくすぶり続けている。

それに対して、日本の大手メディアは批判すらしない。ついに「国境なき記者団」の、2016年の「報道の自由度ランキング」で、2015年の61位から、さらに落ちて72位になった。これでも高すぎるぐらいだ。

これで国民はまたしても無関心を貫き、選挙を棄権するのであろうか。

『朝日新聞デジタル』(2016年4月17日)に「G20、パナマ文書を意識 税逃れ防止対策の強化合意」という記事が載っていた。

「15日に閉幕した主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、各国に課税逃れを防ぐ国際的なルールに取り組むことを求め、制裁措置も辞さない方針で一致した。世界を揺るがせた「パナマ文書」が背中を押した形だが、実現のハードルは高い

共同声明には、国外にある自国民の銀行口座などの課税情報を、各国の税務当局者が交換する国際ルールを強化する対策が入った。

情報提供に非協力的な国を特定する基準を、経済協力開発機構(OECD)が7月までにつくる。参加国には来年の秋ごろとみられるG20首脳会合(サミット)までに、これを満たすよう求めた。税金の安い外国に資産をためておこなう脱税や資産隠しを防ぐためで、非協力的な国は「ブラックリスト」にのせて公表し、税負担を重くするなどの対抗措置を取る方針だ。

(中略)

世界的に格差が広がるなか、各国の首脳らとタックスヘイブン(租税回避地)の関係を暴いた「パナマ文書」が明らかになり、課税逃れをする大企業や富裕層への批判は無視できない。麻生太郎財務相は閉幕後の記者会見で、「極めて有効に働くと思う。パナマ文書が出てきたおかげで、関心が高まった」と語った。

(中略)

すべての国がルールを守って足並みをそろえ、抜け穴を防いで実効性を高める必要もあるが、簡単ではなさそうだ。「水が漏れるように、(本来納められるべき)税も制度の隙間のある地域をめがけて流れ込む」(日本の財務省)ためだ。

米国にも、企業に有利な法体系を持つデラウェア州やネバダ州など、事業活動の実態がないペーパーカンパニーの温床と批判される地域がある。アメリカン大学のドナルド・ウィリアムソン教授は「途上国にも、外国から呼び込んだお金を持ち続けたい国がある」と指摘する」(「G20、パナマ文書を意識 税逃れ防止対策の強化合意」)

「実現のハードルは高い」「簡単ではなさそうだ」と他人事のようにうそぶくから、世界72位のメディアとバカにされるのだ。税の不公平・不公正というこの現実と闘おうとしない。逆にプーチン批判に国民の関心を振り向け、リークの意図に足並みをそろえている。

麻生太郎が「極めて有効に働くと思う。パナマ文書が出てきたおかげで、関心が高まった」と余裕をもって語るからには、それだけ抜け道が多く、出来はしないとタカをくくっているのであろう。

日本政治は、これまで世界第2位の巨額な税逃れを、日本の大企業・富裕層に認めてきた。その一方で、国民には冷酷な消費税増税と社会保障削減をおこなってきた。いわば格差社会を政府が進めてきたわけだ。それは「マイナンバー」制度によって、より過酷になりつつある。

脱税を許された企業・人物の穴埋めを、脱税できない庶民にさせるわけである。

米国にタックス・ヘイブン(租税回避地)があり、日本の経済特区も、いずれ米国並みのタックス・ヘイブンを目指すものと思われる。

日本の場合、大企業の損失を税金で救済するというシステムが、いわば政治文化として根付いている。それが東電にも理不尽な形で適用され続けている。政治ばかりか、司法までが東電救済をやるような国である。とてもタックス・ヘイブンへの取り組みを真面目にやる高い政治文化はない。

タックスヘイブンで、まがりなりにも仏金融当局が仏金融大手ソシエテ・ジェネラルを家宅捜索しているが、こんなことは劣化した日本政治には夢のような話だ。とにかく調査すらしないというのだから。

早速、経団連から反対の声が上がった。反対するということは、タックス・ヘイブンをやっていることを認めたようなものだ。もはやなりふり構わぬ、といった感じだが、同時に東京の大手(「記者クラブ」)陰謀メディアを味方に付けているので、国民に対する配慮など皆無である。

「経団連が国際課税に関してまとめた提言案が18日、明らかになった。欧州連合(EU)域内で事業を行う多国籍企業に納税情報などの開示を求める欧州委員会提案は、二重課税の拡大や企業秘密の流出につながりかねず、反対する姿勢を明確にした。19日に発表する。

EU諸国はタックスヘイブン(租税回避地)の実態を暴いた「パナマ文書」の問題を受けて課税逃れ対策を強化。影響は日本企業の海外事業にも及びそうな気配になってきた。

欧州委はこのほど、全世界での年間売上高が7億5000万ユーロ(約920億円)を超える多国籍企業にEU加盟国ごとの納税額や財務状況などの開示を義務付けることを欧州議会に提案した。

経団連の提言案は、欧州委の提案について「懸念する」と指摘。事業を行う国ごとの所得、納税額といった国別報告事項は「企業の機密情報を含む」ものであり、一般公開を可能な限り回避するとした国際合意に反すると訴えた。(「経団連、欧州案に反対=課税逃れ対策で-パナマ文書」『時事ドットコムニュース』2016年4月18日)

日本の経団連の提言案ということで、あらかた予想はしていたが、案の定、国際的な不公平で不正なタックス・ヘイブンについても、まったく見識を欠いた提言であった。

それは、事業を行う国ごとの所得、納税額といった国別報告事項は「企業の機密情報を含む」ものであるから反対するというもの。

なんだか反対のための反対に聞こえてくる。世界が公平な税制に向けて協調体制をとるときに、著しく常識を欠いた姿勢だ。

日本の財界は、企業利益を上げたときも内部留保とタックス・ヘイブンに努め、労働者に回してこなかった。首相に賃上げを要請されるなど、恥ずかしい経営体質を改めることがなかった。

背景には政治とメディアへの侮りがあり、ひいては国民への無視があった。

世界72位の、劣化したメディアによる、絶えざる洗脳によって国民が真実から遮断され続けている。それが温和しい、羊のような民族性を育て、何かにつけて財界に都合のいい国家になってしまった。

それがこういった局面でも、恥知らずな姿勢となって、平気で出てくるのである。

『エコノミスト』(2016年4月7日号)が、「パナマ文書」暴露事件について書いている。

オフショアタックスヘイブン(租税回避地)に立ち込める霧を払いのける取り組みを強化すべきだ

3年前、ある監督機関が、流出した機密文書に関する調査を行い、一連の報告書を公表した。オフショア会社設立を専門に扱うパナマの法律事務所モサック・フォンセカの一部のクライアントは不安になり、彼らの機密情報は安全かどうか、同事務所に問い合わせた。

その問い合わせに対し同事務所は、機密事項は「最先端技術を備えた」データセンターに保管されており、「世界トップクラス」の暗号化アルゴリズムにより保護されているから何も心配することはない、と答えた。

ところが、その同じ法律事務所が大失敗をやらかした。今週、前述の監督機関である国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が、モサック・フォンセカ法律事務所のクライアントに関する流出データについての最初の報道を行ったのだ。

情報漏洩者(その人物の素性は明らかにされていない)は、約40年間にわたって蓄積された1150万件ものファイルをICIJに提供した。「パナマ文書」と呼ばれるようになったこのデータには、オフショアに財産を保有する政治家や政府関係者140人の名前が記されており、それには12人の現職または元職の大統領、国王、首相が含まれていた。

パナマ文書は、ならず者国家、テロリスト、麻薬王などと取引を行っている疑いにより米国でブラックリストに載せられている企業または個人のうち少なくとも33社が金を動かし、隠した方法を明らかにしている。莫大な金が動かされているが、関係者の一部には世界的なビッグネームが名前を連ねている。

(中略)

モサック・フォンセカ法律事務所もクライアントの大部分も、不正行為は行っていないと主張している。確かに、オフショアの会社や銀行口座を利用する正当な理由は数多くある。例えば、2つの企業がクロスボーダー合弁事業を立ち上げる場合、当事者企業の所在国以外の国でその合弁企業を登記する場合がある。または、政情が不安定な国の市民は貯蓄の安全な預け先として他国を選ぶことが多い。しかし、オフショア会社は、脱税や非合法的な財産を隠ぺいする場所として利用される場合もある」(「世紀の情報漏洩事件 パナマ文書事件から学ぶべき教訓)

パナマの法律事務所モサック・フォンセカのクライアントが、自分たちの機密情報は安全かどうか、とモサック・フォンセカに問い合わせた。すると、同事務所は、「機密事項は「最先端技術を備えた」データセンターに保管されており、「世界トップクラス」の暗号化アルゴリズムにより保護されているから何も心配することはない」と答えた。

わたしが今回の事件を漏洩ではなく、リークだとする根拠のひとつはこれである。

モサック・フォンセカにとっては、機密情報の保護は最重要事項である。いわば機密保護で食っている組織であり、そう簡単に破られるとは思えないのだ。

最高のプロによって二重三重にデータは保護されていた筈だ。それが簡単に破られている。しかも、奇怪なことに、犯人は、まず匿名でドイツの新聞社『南ドイツ新聞』に漏らしている。その後、ワシントンD.C.にある国際調査報道ジャーナリスト連合 (ICIJ) にデータを送った。

これではあまり金にならないだろうし、交渉の過程で新聞社に素性を知られる。これは重大なリスクである筈だ。

(申し訳ありません。メルマガの公開はここまでです)

有料メルマガ『兵頭正俊の優しさ出前』を配信しております。

2011年10月1日より「兵頭正俊の優しさ出前」(月額:864円(税込)/配信サイト:まぐまぐ)を配信開始しました。

月・水・金・それに、ほぼ週に1回の号外を配信しております。実質、週に4回の配信になります。

優れた情報と、状況の分析・とらえ方を提供します。そして、「記者クラブ」メディアの情報操作と国民洗脳を対象化し、あなたを現在とは違うステージに招待します。
価格以上の価値があると自信があります。ぜひ購読のご検討をお願い申し上げる次第です。

なお、別に無料メルマガ『兵頭正俊の知らなきゃ滅ぶニュースの真相』PC用 携帯用 を2011年8月29日より、「まぐまぐ」から配信しております。

PC用と携帯用をあわせて3000を越える読者に支持されております。

無料で、ほぼ週刊です。

携帯の送受信の制限を考慮して、分割して送信するように改善しました。

ご登録をよろしくお願いします。

なお、メルマガはテキストファイルであり、このブログ掲載の画像などはありません。

また、このブログ掲載の文章は、メルマガの一部であり、ブログ用に編集してあります。

ブログランキング・にほんブログ村へ