ロバート・ジャービスとミラ・ラップが「誰も望まない戦争はどのように始まるか ―― 外交から戦争への転びやすい坂道」を書いている。一読してきわめて状況的で重要な論文だと思った。

(ロバート・ジャービスは、コロンビア大学教授(国際関係論)。米国の政治学者で、現在はコロンビア大学教授(国際関係論)。外交政策の意思決定におけるパーセプションとミスパーセプションを研究テーマとしている。

ミラ・ラップ=フーパーは、イエール大学中国センター シニアフェロー。専門はアジアの安全保障、核兵器と抑止など。戦略国際問題研究所、米外交問題評議会などを経て現職)

アメリカが北朝鮮に何を望んでいるかは、随分昔から明らかにされてきた。北朝鮮の非核化、つまり「完全かつ検証可能で不可逆的な核の廃棄」をワシントンは長く模索してきたし、平壌の大規模な軍事行動を抑止することが目的とされてきた。

最近トランプはこのウイッシュリスト(人生でやりたいことのリスト、欲しいものリスト 注 : 兵頭)に「米大陸に到達できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発禁止」を付け加えた。

ワシントンは、韓国が民主的に管理する朝鮮半島の統一をかねて呼びかけてきたが、その可能性を積極的に模索したことは一度もない。もっとも、北朝鮮が核能力とICBMの完成に近づくにつれて、半島統一という目的の実現は難しくなっている。

いまや特定段階の行動を阻止することが目的ではない。抵抗され、妥協が必要になるとしても、北朝鮮がこれまでとは逆のコースを歩んで、すでに開発している能力を放棄するように説得することが目的に据えられている。

従って、現状では「アメリカが(北朝鮮に)何を望むかではなく、どのような状況なら受け入れられるのか、そのために何が必要か」が問われている。

(中略)

北朝鮮がその核・ミサイルプログラムから何を引き出したいかは、かなりはっきりしている。平壌は「体制を存続させ、アメリカの攻撃を抑止すること」を望んでいる。

さらに、核兵器の保有は国家の名声につながると考え、かつてのパキスタンと同様に、実質的な核保有国として世界に受け入れられることを望んでいる。

実際、核兵器があれば、平壌が主導する朝鮮半島の統一、日韓へのアメリカの安全保障関与の切り崩しなど、北朝鮮の長期的な目的を促進する助けになる。

答えるのが難しいのは、「金正恩体制が核能力と体制の生存は切り離せないと考えているか」、つまり「核兵器をいかなる状態でも維持する必要があると考えているかどうか」だろう。

そうであれば、アメリカがオファーできる安全の保証、つまり、北朝鮮に核を放棄するように説得できるようなオファーは存在しないことになる。

唯一、機能しそうなオファーは、米韓の安保条約を破棄して、朝鮮半島からすべての米軍を撤退させることだが、米外交官がこれを提案することはあり得ない」(『Foreign Affairs Report』2018 NO.5)

金正恩がトランプとの首脳会談を求めた理由が、いろいろと憶測を呼んでいる。

恐ろしいのは、交渉とともに、北朝鮮がそんなことなど望んでいなかったこと、あるいは米国にそんなことを認める気がまったくないことがわかったときである。

トランプが血相を変えて会議場を飛び出してくることがないように、米国としては、まずなぜ北朝鮮が交渉に踏み切ったのか、その動機を十分に認識しておく必要がある。

(1)米国の制裁を緩和させるため

(2)超大国の米大統領と会談することで名声を手にし、実質的に核保有国として受け入れられるため

(3)金王朝体制の維持存続(米国による攻撃抑止)のため

他方、米国は北朝鮮に対して何を望んでいるのか。何のために交渉するのか。その確認をトランプ政権内で統一しておく必要がある。

(1)北朝鮮の非核化(完全かつ検証可能で不可逆的な核の廃棄)のため

(2)北朝鮮の大規模な軍事行動抑止のため

(3)米大陸に到達できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発禁止のため

論文は「ワシントンは、韓国が民主的に管理する朝鮮半島の統一をかねて呼びかけてきたが、その可能性を積極的に模索したことは一度もない」と書く。朝鮮半島の分断状態の維持を、内心では希望する国は多い。というか、半島統一を喜ぶ国はないといった方が適切なほどだ。

まず米国にとっては、北朝鮮が存在するおかげで、日韓に大量のポンコツ兵器を破格の言い値で売却できる。米軍産学複合体が生き延びられる。

中露にとっては、在韓米軍のバッファとして北朝鮮が機能している。もし半島が統一されたら中露の国境沿いに米軍のミサイルが林立する可能性が出てくる。

日本にとっては、隣国に突如、核保有の強国が出現することになる。

北朝鮮としても、米国への譲歩や妥協が難しくなっている。なぜなら研究し開発段階の核兵器を中止せよということではなくて、すでに完成した(北朝鮮の発表)核兵器を廃棄せよ、という交渉になるからだ。

ここでわたしたちは、北朝鮮が直面する巨大な矛盾に突き当たる。北朝鮮の核武装を解除することが米国の最大の眼目である。しかし、核武装を解除すれば、これまでの北朝鮮の懸念通りにフセインやカダフィの運命が待ち構えている。

この懸念が実現する可能性は小さくない。それを防ぐためにも、交渉には韓国と中露に入ってもらうのがいいとわたしは考えている。

米国はそもそもこの交渉をまとめる気があるのか。

ほんとうはそこから考えなければならない交渉である。

この論文でふたりの執筆者は、北朝鮮が核兵器を保持し続ければ、

(1)朝鮮半島統一の、北朝鮮主導

(2)日韓両国に対する米国の安全保障関与の切り崩し

といった2点の手助けになると書いている。

となると、北朝鮮は核兵器を手放さないということになる。

米国もまた朝鮮半島からすべての米軍を撤退させることはしない。せいぜい駐韓米軍の縮小だろう。すると、さまざまなことが現状のまま朝鮮半島に残る可能性がある。

(1)南北統一が実現した場合

核保有の朝鮮国が誕生することになる。そのなかに縮小された米軍が存在する

(2)南北統一ができなかった場合

核保有の北朝鮮が存在し、韓国には縮小された米軍が存在する

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