鳩山由紀夫の発言が物議をかもしている。尖閣の領有権について中国で発言したものだが、現在の日本の状況について様々なものをあぶりだしている。

それは以下の5点である。

1 現在の反動化した日本の状況では、理性的客観的な正論も出しにくい状況になっていること。

2 日本の記者クラブメディアは堕落の極みに達しており、領土ナショナリズムを煽る反中・反韓の洗脳機関に堕落していること。

3 安倍自民党のもと、日本はアジアのみならず、世界から孤立し、極東のイスラエル化の道を歩み出していること。

4 米国は、第二次世界大戦後の、戦勝国支配の世界秩序に対して、異議申し立てをするものとして安倍自民党や石原・橋下日本維新の会を警戒していること。

5 日本で戦後世界支配へのパラダイム転換(領土ナショナリズム)が起きたとき、米国は明確に中国・韓国との連携に軸足を移すこと。

以上の5点を押さえておけば、状況認識としては、さしあたって大過ないであろう。

これらの厄災の原点は民主党政権にあり、とりわけ「尖閣に領土問題はない」とした菅直人、尖閣国有化を宣言した野田佳彦らのアマチュア政治の浅慮にある。

これによって、国際的には尖閣諸島が「係争地」であることが露出してしまった。まさに日本のオウンゴールであり、中国にとっては勝手に日本が「係争地」であることを証明してくれた、笑いの止まらない事態なのが、ことの真相なのだ。

それを今、鳩山由紀夫が国益に沿って元の棚上げ論に戻そうとしている。

この棚上げ論は、自民党の田中角栄の日中国交回復時に決められた日中両国の約束である。

菅直人の前に政権を担った鳩山由紀夫は、この棚上げ論のもとで政権を運営したのだから、鳩山の立場に立てば当然の主張であり、何の問題もない。

ところが鳩山は袋叩きに遭っている。日本の政治的民度とはこの程度のものなのである。

それにしても鳩山由紀夫への、自民党、マスメディアのバカの仕方は異様だ。小野寺防衛相に至っては、鳩山由起夫の、尖閣諸島が「係争地である」との認識に対しても、「国賊」呼ばわりをする始末だ。

鳩山を象徴的人物に見立てて、中国とのパイプをなくそうとする意図を感じる。政治家のパイプが消えたら、領土問題で後は軍人の出番になる。そういう世相になってきた。

中国ではなく、日本が変わったのである。変わるのは構わないが、以前の政府が結んだ外国との約束、戦勝国と結んだ条約までも反故にするとなれば、大問題である。

尖閣国有化宣言は、日中平和友好条約の廃棄のみならず、深層ではポツダム宣言(それに先立つカイロ宣言、ヤルタ協定)に抵触してくる。菅も野田も安倍も、そのようなことまで深く考えず、実に気楽に対中戦争に突き進んでいる。

尖閣国有化宣言から対中戦争に向かう戦略は、何の国益ももたらさない。アジアで孤立し、世界で孤立し、極東のイスラエルに向かって歩む天下の愚策である。

日本の戦後はポツダム宣言受諾から始まっている。そのポツダム宣言の第8条では、「カイロ宣言の條項は履行せらるべく、又日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国並びに吾等の決定する諸小島に局限せらるべし」とし、カイロ宣言の条項は履行すべき、とした。

日本が尖閣を日本の領地にしたのは、中国の清の時代である。ところが、1943年11月27日に米・英・中3国首脳がカイロで行ったカイロ宣言では、中国の清の時代に日本が中国から奪った領地は中国に返還される、と定めた。

「一 同盟国ノ目的ハ日本国ヨリ千九百十四年ノ第一次世界戦争ノ開始以後ニ於テ日本国ガ奪取シ又ハ占領シタル太平洋ニ於ケル一切ノ島嶼ヲ剥奪スルコト竝ニ満洲、台湾及膨湖島ノ如キ日本国ガ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコトニ在リ

一 日本国ハ又暴力及貪欲ニ依リ日本国ガ略取シタル他ノ一切ノ地域ヨリ駆逐セラルベシ」
(引用終わり)

したがって、清の時代に尖閣諸島が清の管轄権のもとにあったとすると、尖閣諸島は「日本国カ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域」にあたることになる。

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鳩山由紀夫は、中国の立場に立てば当然このような主張は出てくる、といったわけで、尖閣諸島は中国の領土、といった訳ではない。

べつに馬鹿げた暴論を吐いているわけではないのである。私たちは如何なる意見に対しても冷静になり、客観的論理的になる必要があるのだ。

誤解のないようにあらかじめいっておくが、私は鳩山由紀夫なる政治家を一貫して評価していない。

今は多くの人が領土ナショナリズムの洗脳のもとにあり、親米か親中か、右翼か左翼か、の物差しで分かったような顔をしているが、そこまで単純に、バカになる必要はないだろう。

個人も国家も、いいところもあれば悪いところもある。良いときもあれば悪いときもある。鳩山由紀夫をわたしが評価しないのは、次の4 点による。

1 民主党政権はなぜ失敗したか。理由のひとつは、鳩山が閣外に小沢一郎をおいたためである。「友愛」のロマンを生きるためには、それだけ冷厳なリアリズムで仕切る必要があったのだ。それを人事にまでロマンでやり、鳩山は閣内に詐欺師や嘘吐きを大量に入れてしまった。世間は鳩山に甘すぎる。鳩山の罪は非常に重い。

米国・官僚・財界、そして政界も「記者クラブ」メディアも、小沢一郎が政界の裏方に回ることを願っていたし、今もそうだ。だから小沢を隠す戦術は間違っているのである。09年度政権交代時に、首相になった鳩山は堂々とハレ(晴れ)の舞台で小沢に活躍してもらうべきだったが、それをしなかった。対米自立の優れた政治家は首相になれない、とする政治的偏見、既得権益支配層の暗黙の要請を受け入れてしまった。

2 鳩山由紀夫は組閣にあたって、小沢を閣内に入れず、逆に邪悪な菅直人を副総理として取り込んだ。そして政権の目玉になる「最低でも県外」の普天間問題の所管大臣に、呆れたことに岡田克也(外相)、北澤俊美(防衛相)、前原誠司(沖縄担当相)を充てた。

すべてえりすぐりの対米隷属者であり、鳩山由紀夫の自己否定の陣容である。

これは沖縄の普天間基地問題を自民党案に戻す布陣である。現実はそのようになっていった。この組閣をもってしても、いかに鳩山が政治に不向きな人物であるかがわかる。

3 鳩山の辞任によって、民主党は大きく変質し、米国・官僚に隷属して、うまくやろうという空気になった。つまり本家の自民党と同じ政治をやろうということである。結果として鳩山は後継を対米隷属の菅直人に託し、民主党壊滅の原因を作ってしまった。

4 それが実施されれば数万の自殺者を生む消費税増税をめぐって、小沢一郎たちは野田執行部を批判して党を出たが、鳩山由紀夫は仲間を誘って出ることも、ひとりで出ることもしなかった。

沖縄県民を裏切った後に、せめて消費税増税に関して国民との約束を守り、自分ひとりでも民主党を出るべきだった。

しかし踏ん切りがつかず、民主党を出るのは、何の影響も意味もなくなった今年(2013年)の6月末である。

以上の4点が私の鳩山評価である。私のメルマガの読者に誤解はないと思うが、だからといって、今後鳩山のすべての発言がダメだ、ということにはならないのである。

先に述べたように人も国家も、いいところもあれば悪いところもあり、良いときもあれば悪いときもあるからだ。

現在の鳩山由紀夫は、政界のほとんど、それに「記者クラブ」メディアを向こうに回して正論を吐いている。

鳩山の場合、どこまで行けるか、が問題になるのだが、今回の場合、孫崎享や植草一秀らが側にいるので、遠くまで行けるかもしれない。

少なくとも民主党壊滅のA級戦犯に取り囲まれていた以前のようにはならないだろう。

わたしたちとしては、日中双方の主張を、偏狭な領土ナショナリズムに与することなく、冷静に客観的に分析することが大切である。

と同時に中国が以前の棚上げ論でもいいとしているのだから、さしあたっては民主党菅直人、野田佳彦の素人政治以前に戻し、中国との平和友好を取り戻すことが肝要である。

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