福島第1原発が破壊されたのは、2011年(平成23年)の3月11日だった。もうそれから7年半ほど経つ。この時間を長いと感じるか短いと感じるかは個人差があろう。

わたしはとても短く感じる。まるで昨日のようだ。いや昨日という感じすらしない。ずっとこの日から夜は来ず、日は明けたままだ。

この事件のことを日本人は軽く考えすぎる。それは廃炉費用を含めて経済的な地獄を何十万年にわたって強いられるばかりではない。健康被害は民族の存続を危うくするレベルのものだ。この国の為政者はそれもあって移民大国として180度の転換を謀ったのである。自分たちが支配者でいさえすれば、99%はネイティブの日本人でなくてもかまわないのだ。

今日のメルマガでは、フィリップ・パトー・セレリエの書いたルポルタージュ「福島原発事故から7年——日常になりつつある悲劇」(ル・モンド・ディプロマティーク 仏語版2018年4月号)を切り口に福島第1原発破壊の現在を考える。これまでとは違って、明治維新との絡みで原発を考えてみたい。

(フィリップ・パトー・セレリエはジャーナリスト、この文章の訳は川端聡子が手がけている。[訳注1]などの表現は兵頭の方で割愛して引用してある)

北海道は19世紀に日本人[和人]によって征服されたが、そこには先住民のアイヌが住んでおり、本州でもっとも広い面積を有する東北地方も彼らの土地だった。東北地方は長いあいだ世界の果てのようにみなされ、皇居のある都(かつては京都、今日では東京)から軽蔑を持って寒冷な辺境と位置付けられていた。古くは「みちのく」(道を越えた奥深くにある地)と呼ばれた東北地方は、権力の中枢から遠く離れ、蛮夷(未開の人々)やつまはじき者、あるいは山形県の寒さ厳しい山中を遍歴する山伏のような修験者しか住むことのない地域だと考えられていた。

原発のお伽噺

1960年代以降、国はこの東北地方にいくつもの原発を建設しようと考えた。[そこでつくられる電気の]主たる利用者は首都に住む人たちではあったが、それは地元住民に文字通り、また象徴的な意味でも光をもたらすものだった。東京とその近郊都市(人口およそ4000万人)にしてみれば、開発の進んでいない広大な東北(約6万7000平方メートル)は、その[原発建設という]厄介ごとを受け入れるのにふさわしい、ありがたい存在だった。高校・大学を卒業した福島の若者は、漁業や農業、そして発展途上にある旅行業以外に仕事を求めて地元を離れるのがほとんどという状況だったのだ。

東北6県は、天から降ってきたこの原発という利益を奪いあった。本州最北端に建設された六ヶ所原子核燃料サイクル施設もまたそうだった。この施設にはウラン濃縮工場、放射性廃棄物貯蔵管理センターそして再処理工場が収容され、再処理工場についてはラ・アーグ[フランス北西部にある再処理工場]の技術をモデルにフランスのアレヴァ社より協力を得ている。事業指定申請からほぼ30年が経ち、今年[2018年]1月で設備投資額は160億ユーロを越え、施設の完成は23回延期されている。この工場は2021年に稼働が予定され、その翌年には、極めて異論の多いMOX燃料(使用済み燃料の一部を再利用した二酸化プルトニウムと二酸化ウランの化合物)製造施設が完成する予定だ。

全国的にみて原発に重要な河川・水路網が不足しているため、原子炉の冷却に適した海岸部を擁する福島県は、福島市、大熊町や双葉町などの自治体の後押しを受け、候補地に手を挙げた。東京から北東に225キロメートルという距離も、電力供給に優れた立地条件とされた。こうして6基の原発が1967~1979年に次々と建設された。誰もが福島第一原発のことを考え、もはや作家の谷崎潤一郎がたたえた「陰影」のことなど人々の頭の中から消えてしまった。複合的かつ重要な国家的支援(補助金交付、税金の優遇措置など)が電力のお伽噺によってもたらされ、地域経済を潤した。市長や市議はこの巨額な予算の恩恵を享受し、選挙での得票へとつながる人気取りの材料になった。福島駅の正面には威圧的な「TEPCO」(原発運営会社である東京電力の略称)の文字が見える」(「福島原発事故から7年——日常になりつつある悲劇」

いまの日本に起きていることは、外国人の書いたものの方がわかりやすいし、深いものがある。とくに政権が隠そうとしているもの、象徴的には原発がそうだ。

フィリップ・パトー・セレリエのルポルタージュが優れているのは、原発と、日本における東北という土地柄のもつ意味に踏み込んでいることだ。こういうのは、日本人の場合、東北に遠慮して、書くことは滅多にない。また編集者もいろいろと計算して書かせないだろう。

「東北地方は長いあいだ世界の果てのようにみなされ、皇居のある都(かつては京都、今日では東京)から軽蔑を持って寒冷な辺境と位置付けられていた。古くは「みちのく」(道を越えた奥深くにある地)と呼ばれた東北地方は、権力の中枢から遠く離れ、蛮夷(未開の人々)やつまはじき者、あるいは山形県の寒さ厳しい山中を遍歴する山伏のような修験者しか住むことのない地域だと考えられていた」。だから原発のニンジンをぶら下げられて飛びついたと言う認識は、まだ浅い。東北の原発はけっして善意のプレゼントではなかったからだ。

それなのに「東北6県は、天から降ってきたこの原発という利益を奪いあった。本州最北端に建設された六ヶ所原子核燃料サイクル施設もまたそうだった」。明治も江戸もまだ生きている。この認識が何よりも重要なのだ。とりわけ暴力によるクーデターで政権を幕府から奪い取った長州汚職閥の政治が、現在も理想を明治維新においていることでも、江戸と明治は重要なのである。明治、大正、昭和、平成と区切ることには、あまり意味はない。江戸から現代までは、貫かれている政治の一本の線がある。それが長州汚職閥の政治である。

明治維新以後、長州汚職閥の政治は、幕府側についた藩に対して徹底した弾圧を加えた。朝敵・賊軍とされたのは、次の6藩である。( )内は、現在に長州によって持ち越された厄災である。

1 会津藩(現在の福島県。福島第1原発とその破壊。計6基の原発)

2 桑名藩(現在の三重県。原発を押しつけられそうになったが、反対運動が強力で現在は中止されている)

3 高松藩(現在の香川県 四国電力の原子力本部は香川県高松市の本店内にある。伊方原発の管理・運転計画をやっている)

4 伊予松山藩(愛媛県 伊方原発 加計の獣医学部)

5 備中松山藩(岡山県 加計の本部 岡山理科大学 倉敷芸術科学大学など)

6 大多喜藩(千葉県 千葉科学大学)

以上であるが、原発がまるで懲らしめの武器のように設置されていることに一驚する。また、長州のアホぼん三世の腹心の友・加計孝太郎が、経営する学校を、明治以来、長州の敵として弾圧されてきた県に、まるで狙ったかのように進出していることにも驚かされる。

このほか、奥羽越列藩同盟(おううえつれっぱんどうめい 戊辰戦争中の1868年(慶応4年 明治元年)5月6日に成立した同盟。陸奥国(奥州)・出羽国(羽州)・蝦夷地(北海道)・越後国(越州)の諸藩が、薩長の新政府の弾圧に抵抗して結成された)の諸藩には、蝦夷地(北海道)には泊原発、越後国(越州)は新潟、福井などだけでもまさに原発が林立している。

明治も江戸も昨日のことなのだ。さまざまな利権、怨念はそのまま現在に生きている。軍事クーデターを起こした薩長の官賊の末裔たちと提灯持ちは、戊辰戦争の敵たちの地へ原発を設置した。その象徴として狙われたのが、会津(6基の原発)である。会津だけではない。戊辰戦争後、敗北した会津藩主松平容保(まつだいらかたもり)の嫡子・松平容大(まつだいらかたひろ)が流された斗南藩(となみ 現在の青森県東部)には、現在、六ヶ所村の再処理施設がある。まさに原発は悪魔の放つ刺客なのだ。

また、新政府に対して、西郷隆盛を中心に西南戦争で逆らった薩摩(鹿児島県)にも、江藤新平を中心に佐賀の乱を起こした佐賀(佐賀県)にも、懲罰としての原発が建てられている。

例外的な土地もあるが、ほぼ明治の長州汚職閥の政治に逆らった土地に、あるいは徳川親藩の土地に原発が懲罰として建設されていると思ってまちがいない。

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